仕事でたまたま箱根に出かけたのだが、仕事の合間をぬって、ポーラ美術館を訪れた。
いまポーラ美術館でシャガール展をやっているからだ。
シャガールの絵は美しい。また実に面白い。
同じくユダヤ人だが、裕福な商人の娘のベラと婚約し、結婚したシャガールは、亡命先のアメリカ合州国で、急逝してしまうまで、約30年間ともにベラと暮らした。
シャガールの数々の絵を見ていると、私でもシャガールの喜びや悲しみや、あるいは自己の存在への探求を理解できる気がした。
シャガールはユダヤ人だ。ヴィテブスクという、シャガールの生まれ育った故郷。その故郷をシャガールは忘れることができない。偉大なものは、常に土着的なものだと思うけれど、シャガールも例外ではない。村一番の床屋の叔父さんの思い出なども、子どもの頃の生まれ故郷が、まさに宇宙であることを思うと、わかる気がした。しかし、土着的であると同時に、優れたものは同時に常にインターナショナルでもある。
シャガールはパリに出て、パリに住み、パリを第二の故郷と思ったようだが、それでも故郷のヴィテブスクを忘れたわけではない。また旅もたくさんして、迫害から逃れるためにアメリカ合州国へと亡命した。
「色彩の詩人」と言われたシャガールは、訥々と話をしたということだが、イーディッシュ語・ロシア語・フランス語などを話したはずだ。
歴史に翻弄される中で、シャガールは、98歳まで生きて、たくさんの絵を描いた。
命や愛を描いたシャガールは実に魅力的だ。