映画「タイタンズを忘れない」

タイタンズを忘れない


 昨日書いた映画「タイタンズを忘れない」(Remember the Titans)の話だけれど、高校のアメリカンフットボールのコーチはあれほどの権限があるのかということに驚いたりする。
 映画の冒頭で、白人のCoach Yoastが、"If you ever wanna play for me again, get in the truck now. "と言う場面がある。teamではなく、"play for me"というのが凄い。
 また、アフロアメリカンのCoach Booneも、"Is this your team or is this your daddy’s team?"と白人の高校生Gerryに迫る場面がある。daddyというのはコーチ・ブーンのことである。こんなことを言われてコケにされたら、部をやめてもおかしくない。
 Coach Booneは、部員たちに次のように言い切ってもいる。

 This is no democracy. It is a dictatorship. I am the law.

 つまり、「民主主義はない。専制だ。俺が法律だ」というのだから、これも凄い。

 ブーン・コーチのあまりのスパルタ教育に、ヨースト・コーチも、ここは高校のアメフト部で、海軍ではないというようなことを言ってブーン・コーチを諭すが、ブーン・コーチがトップなので、そこには従わざるをえない。
 ただ、ブーン・コーチは、もとからそうした性格でもないことが表現されている。自分はMLKでもない、ただのコーチだという。ただし、ブーンはfairな公平な態度を堅持する人間だ。スタメン選出では、「色は問題ではない」(Color doesn't matter.)と言い切る。
 黒人に偏見を持たない部員・Lastikに対する態度でもそうしたブーンの公平な態度が表現されている。

 映画の中でいくつかいい場面があるが、チームのキャプテンの白人のゲリー、そしてチームの主翼メンバーである黒人とのジュリアスの口論は見事だ。

 Gerry: See, man, that’s the worst attitude I ever heard.
Julius: Attitude reflects leadership, Captain.

 つまり、「いいか、お前の態度はこれまで経験した中で最低の態度だ」(ゲリー)というキャプテンの突っ込みに対して、お前こそとばかりに、「態度というものは指導性を反映するものさ、キャプテン」(ジュリアス)という反論が説得力がある。

 クォーターバックのRonnie Bass (Sunshine)を起用するときの励まし(pep talk)の場面もいい。

 Coach:You had 12 brothers and sisters?(12人も兄弟姉妹がいたっけ)
 Boone: Eight. (8人だ)
 Coach: Yeah. Twelve sounds better. (うん、12の方がいいな)


 また、ゲリーの"I want Ray off the team, Coach. "(「レイをチームから下ろしたいんだ、コーチ」)。"I know that Ray missed that block on purpose. "(「レイはわざとブロックをはずした」)。それに対して、ブーンは、"You make a decision, but you support your decision. "「お前が決めろ。ただし、ブレるな」と言う。

 警察官がジュリアスに近寄っていく場面も印象的だ。
 ジュリアスはてっきり警官にいやがらせをされると思っていたら、「昨夜はお前らいい試合をしたもんだな」と意外なことを言われる。面食らっているジュリアスに、その警官は「20年間の中で一番のディフェンスだ」と褒める。

Officer: Heck of a game you boys played last night.
Julius: Thank you, Officer.
Officer: The best defence I’ve seen in 20 years.

 「タイタンズを忘れない」(Remember the Titans)は実話をもとにした映画であるというが、団結できないチームがどのようにしたら深い亀裂を乗り越えていけるのか、現実は甘くはないが、公民権運動を背景によく描かれていると思う。