「議事録さえ作れぬ政治」(朝日新聞)

 以下、12月7日付朝日新聞より。

 

 特定秘密保護法案を審議する参院特別委員会の議事録(未定稿)を手にして目を疑った。5日午後、与党が審議を打ち切り、強行採決に移る瞬間を記録したものだ。


 〇委員長 石井浩郎君(発言する者多し)
 〇石井浩郎君 …(発言する者多く、議場騒然、聴取不能
 委員長 …(発言する者多く、議場騒然、聴取不能
 (委員長退席)


 何が起きたのか、まったく分からない。本当に法案は可決されたのだろうか。国会の公式記録として、後世に伝わるのだろうか。
 私は、麻生政権から野田政権まで環境省を担当した後、1年間の海外留学を経て今夏、日本に戻った。最終盤の国会に取材応援で入ったが、「空気」の変化に驚いた。
 多くの警察官と警備車両、響く法案反対の声、議場での怒号。しばし離れていたからこそ冷静な目線で言える。私が取材していたころは、少なくともこんなに殺伐としていなかった。
 国民の声に耳を傾けず力で物事を片付け、まともな記録も残せないような政治が続けば国会の空気はさらに凍て付くだろう。議事録の「聴取不能」という言葉が、いまの国会を象徴している。(平井良和)