俺が小学生のころ、「暮らしの手帖」という雑誌はとても身近にあった。
俺の親父が近くの本屋から毎月取り寄せていたからだ。
「暮らしの手帖」は、まず表紙がすてきだった。
美的にうつくしい雑誌だった。
その特集がまたよかった。
洗濯機だの、冷蔵庫だの、電化製品が多かったと思うが、各メーカーの製品を徹底的に実験する実証主義。
メーカーから広告費をとらず、商品テストをおこなうという自主・独立の精神がきもちよかった。
ハーパー・リーの「アラバマ物語」*1など、本の宣伝も、他の雑誌がとりあげないようなものを取り上げる独自な雰囲気があった。
編集長が花森安治さんというのは知っていたが、どんな人かは全く知らなかった。
先日の朝日新聞の書評欄に、「花森安治伝」があった。
その書評によると、花森安治さんは「第2次大戦時に大政翼賛会の宣伝部に在籍し『お国のために』懸命に働いていた時期があった」という。
「人はだれでもまちがう。その後、どう生きるかだ」と「花森安治伝」の著者が説いている。「今度こそまちがわないという、狂気じみた覚悟で花森は『まちがった後』つまり戦後を生き切ったのだ」と評者が紹介している。
なにやら昨日観た「太鼓たたいて笛ふいて」の林芙美子と重なる気分がしてならない。
今回、花森安治さんの「灯をともす言葉」を読んでみた。
これはなかなかいい本だ。
子どもの頃から、こういう本が好きだったのだと、あらためて知らされた気がする。
それは俺の親父の考え方ともだぶって見えた。