本書の「はじめに」で書かれているとおり、小径車の自転車は「コンパクトなサイズなので、使う際の精神的なバリアが低い」。また、「軽いので、小柄な人や非力な人、脚力が弱くなったお年寄りなどでも扱いやすい。年をとって多少体力が衰えてきても、小径車なら負担なく走れるし、とっさの際の対応も有利」である。また、「全体の質量が小さい分、部品を換えた場合の変化をダイレクトに体感しやすい」。「ちょっとカスタムするだけで、乗り味がうんと変わってくる」(和田)。そうした面白さがある。
これも「はじめに」に書かれているように、俺も、いつの日か、海外旅行に持参して「異国の地を自転車で走り回って楽しむ」ということをしてみたいと、ずっと考えてきた。
それで、俺も何台か小径車(折り畳み自転車)をもっている。
数ある小径車を選ぶときに問題になることのひとつが、重量とスポーツ性だ。
俺は自転車に詳しいわけでもないが、ロードバイクの進化、ATB(MTB)の進化、そしてフォールディングバイク(折り畳み、小径車)の進化ということでいえば、おそらくロードバイク、ATB、フォールディングバイクの順であり、いまの自転車ブームでいえば、フォールディングバイクが面白いということになるのだろう。
それで、本書のような本もつくられるような時代になったのだと思う。
こうした流れを受けて、自転車好きな人も、それなりに長く自転車とつきあってこられた人は、ATB(MTB)やクロスバイク、ロードバイクとあれやこれやの自転車に乗ってから、フォールディングバイク(小径車)に興味をもった人が多いだろう。
本書の題名となっている「小径車の愉しみ方」も、そもそも「自転車」の本と目星がつきにくい。本書を手にしようとする読者は、そもそも自転車に興味がある読者であるに違いない。
それで、小径車から自転車遊びに入れる人は幸せである。
けれども、小径車選びは難しい。ブームになっているだけにたくさんの選択肢があるから*1一層難しいと言えるだろう。またオールマイティの1台というのはないから、乗っていると、あれこれの不満が出てくるものだ。
本書に登場するマニアは小径車を何台も所有し、またカスタマイズに熱心な情熱的な自転車乗りの方々ばかりだが、入門者があれやこれやの小径車に乗ることはできないし、小径車といってもそれぞれ結構な値段がするから、何台も所有することも現実的ではない。けれども本書はマニアックな人たちに支えられている小径車の聖地の店主が中心となって編まれた本だからこそ、内容はマニアックなものを土台にしているにもかかわらず、初心者の自転車選びに大いに役立つものになっている。また、初心者でも、カスタマイズの試行錯誤の成果の上に簡単に乗っかることができる点は、まさにアドバンテージだろう。
ところで本好きな私はジテンシャ関係も長年あれこれと眺めているが、この出版社*2は聞いたことがない。そうした点もふくめて、本書は街の自転車屋さんがつくったという手作り感がある。
本書によって再度、海外に持っていく小径車選びに熱が入ってしまいそうだ。