「(社説)参院選挙制度 自民の横暴、極まれり」

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以下、朝日新聞デジタル版(2018年7月12日05時00分)から。

 自民党の「数の力」による横暴が極まった。

 参院議員定数を6増やす自民党提案の公職選挙法改正案がきのう、参院の委員会と本会議で可決された。すべての野党の反対を押し切ってのことだ。

 衆院での審議が残るとはいえ、成立は確実な情勢だ。

 選挙制度は民主主義の根幹にかかわる。それを委員会での審議わずか6時間ほどで、政権党が独断で変えてしまう。

 まごうことなき暴挙であり、民主主義の破壊である。

 しかも、自民案は党利党略そのものだ。

 比例区に、政党が優先的に当選させられる特定枠を設けた上で、定数を4増やす。合区した「島根・鳥取」「徳島・高知」の選挙区に擁立できない現職議員の救済策にほかならない。

 政党が決めていた当選順を、2000年に現行の個人名得票の多い順に強引に変えたのは自民党だ。それを今回、部分的に元に戻す。あまりのご都合主義に、あぜんとする。

 特定枠の数は「一部」とあるだけで、各党が自由に決められる。政党ごとに違っていいし、「全部」でさえなければ、候補者の大半を充てることもできる。党名でも候補者名でも投票できる比例区に特定枠が加わることで、有権者には一段とわかりにくい制度になる。

 各党は、合区を導入した前回15年の改正法の一部である付則に「制度の抜本的な見直し」を19年の参院選までに検討し、「必ず結論を得る」と書いた。

 だから、選挙区の「一票の格差」の是正にとどまらず、衆院との役割分担を踏まえた制度改革が期待された。

 だが、自民案は、選挙区と比例区の二本立てという現行制度の基本はそのまま。埼玉選挙区の2増で、一票の格差が3倍をわずかに下回るようにしただけに過ぎない。

 安倍首相も6月の党首討論で「臨時的措置」と認めた。抜本的な見直しは影も形もない。これほど法律を軽んじる姿勢が、許されていいわけがない。

 参院の定数が増えるのは、沖縄の本土復帰に伴う2増以外、例がない。それほどの方針転換なのに、納得のいく定数増の説明は何もない。

 今回は公明党日本維新の会が、全国11ブロックの大選挙区制を提案するなど、抜本改革の芽はあった。国民民主党と立憲民主・希望の党も案を出した。

 それらを自民党が一蹴し、公明党も最後は従った。

 民主主義の危機を強く印象づける与党の暴走である。