「首相補佐官が参院選予定者をPR 経産省主催の会合で」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年6月29日19時53分)から。

 経済産業省が6月14日に福島県で開いた中小企業経営者向けの会合で、同省出身の長谷川栄一首相補佐官(67)が、7月の参院選自民党公認で立候補予定の森雅子少子化相(54)=福島選挙区=が同席する中、森氏の実績をアピールしていたことがわかった。公職選挙法は公務員が地位を使って選挙運動することを禁じており、「道義的に問題がある」との指摘も出ている。

 会合は経産省東北経済産業局主催の「中小企業支援施策に関する意見交換会」。中小企業約30社の社長らが参加した。政府側は長谷川氏のほか、中小企業庁次長や東北経産局長らが出席した。4千円の会費で夕食の弁当と飲み放題付きで、中小企業政策の説明と質疑応答などが2時間ほどあった。

 森氏が会場に姿を現したのは閉会の間際。4分ほどのあいさつで、政府に「地方の実態を見て国の政策を作ってほしい」と注文をつけた上で、「女性がふるさとで輝ける政策をいち早く展開する」「皆様方の意見を反映するよう頑張る」などと述べた。

 長谷川氏は、旧民主党政権の事業仕分けを批判する一方、森氏の来場後は「森先生は福島県を代表して参院で頑張っている」と述べたほか、特定秘密保護法案の担当相として野党と対峙(たいじ)したと紹介した上で「野党から意地悪されたが、無事通した、すばらしい先生」と持ち上げた。森氏への投票を直接呼び掛ける発言はなかった。参加したある社長は「森氏が出てきて、自民党が頑張っているというPRに感じた」と話す。

 公職選挙法は、首相補佐官を含むすべての公務員について地位を利用した選挙運動を禁じており、候補者の推薦や投票の勧誘、演説会の開催などが抵触する。また、国家公務員法人事院規則は公務員の政治的中立性を求めている。

 同種の意見交換会は昨年11月から全国24カ所で開かれ、開催を告知し、会議冒頭の取材も認めている。ただ14日の意見交換会は急きょ開催が決定。対外的に公表されず、すべて非公開だった。

 森氏が会合に同席した経緯について、長谷川氏は「たまたま森議員から電話連絡が入り、私に会いにみえた」と回答。森氏は長谷川氏に呼ばれて会場に行ったとし、法的な問題は「ないと思う」と答えた。

 岩井奉信・日大教授(政治学)は今回のケースについて、「役所の政策説明の場に候補者が来れば、投票依頼と受け止める。道義的、倫理的に問題がある」と指摘している。

 長谷川氏は安倍晋三首相側近の一人。第1次安倍政権でも2006年に内閣広報官を務め、経済産業省中小企業庁長官などを歴任した。退官後、12年12月の第2次安倍政権発足当初から首相補佐官に就き、翌年からは内閣広報官も兼任。首相の記者会見の司会を務め、29日の主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では議長会見も差配した。日ロ平和条約交渉にも深く関わり、共同経済活動の現地調査団の団長を務めている。29日の日ロ首脳会談を前にした外務次官級の協議にも同席した。(関根慎一)