「核禁条約は非現実的なのか 平野啓一郎氏「思い違い」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/12/8 17:00)

 核兵器禁止条約が来年1月に発効する。画期的な国際合意ではあるが、核保有国が背を向ける現状に日本社会には「非現実的」と冷ややかな視線もある。条約は世界を変えられるのか。

小説家・平野啓一郎さん「日本は取り残されている」
 「核兵器はなくせるなら、なくした方がいい」。大半の人がそう思っているでしょう。その上で、多くの人が「でも、日本は米国の『核の傘』の下にいるのだから、条約には賛同できない」と考え、「それが現実主義だ」ととらえている。それは思い違いではないでしょうか。

 長崎を訪ねてみてほしい。小さな町だけど、海があり、丘に囲まれ、異国情緒がある。人は素朴で優しい。小説「マチネの終わりに」でも、町の魅力がインスピレーションになりました。この小さな町の人たちが原爆投下後の一瞬でどうなったのか。長崎で被爆し、2017年に亡くなった林京子さんの小説では、当時を語る人々の長崎弁が、痛烈に胸に響きます。

 日本には核兵器によって命を奪われた人、人生をめちゃめちゃにされた人がたくさんいる。その事実や証言があったから「核兵器は存在すべきではない」という運動が日本の外でも広がり、条約につながった。にもかかわらず賛同しないことを、日本政府は恥ずべきです。

 いま「現実主義」とされるものの多くは、単なる「現状追認主義」です。核兵器をめぐる日本政府の姿勢は、原発事故が起こった後、他国では再生可能エネルギーが発展した中で、かたくなに原発を維持していることと重なって見えます。世界の取り組みは迅速です。日本が「非現実的」と言っていたことが現実となり、いまやさまざまな分野で取り残されています。

(後略)

(聞き手・佐々木亮 聞き手・武田肇)