以下、朝日新聞デジタル版(2021/2/11 16:00)から。
東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの開幕まで半年を切るなか、森喜朗会長(83)が女性蔑視発言をめぐり、辞任の意向を周囲に伝えたことがわかった。国内の大会関係者にとって「代えがきかない」という存在を失うだけでなく、東京大会が負ったダメージは大きく、開催への懐疑論がさらに広がる可能性がある。
本来ならこの時期は、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、本番時の観客数をどうするか国際オリンピック委員会(IOC)、政府、東京都、組織委で詰めの調整をしているはずだった。
4者は17日に予定する会議で一定の方向性を出すべく調整していたが、森会長の発言で広がる批判への対応に追われ、関係者は「全部飛んだ」と言う。小池百合子都知事は10日、4者会議に出席しない意向を表明した。政府は観客の上限や、海外からの観客を入れるかの可否を春までに決める予定だが、女性蔑視発言の余波で調整が遅れている状況だ。
関係者の間では「フルスタジアムは難しい」との見方が支配的で、仮に観客数を間引いたり、無観客にしたりする場合、900億円を見込んでいたチケット収入が減り、公金投入の可能性が高まる。
さらに、「開催可否の重要な時期」と複数の大会関係者がみているのが3月だ。上旬にはIOC理事会や総会が開かれ、下旬には聖火リレーがスタートする。昨春も聖火リレーの開始2日前に1年延期が決定したことから、「今年も3月を乗り越えなければならない」とある組織委幹部は語る。
昨春は、森会長が当時の安倍晋三首相やIOCのトーマス・バッハ会長らと交渉し、延期にこぎつけた。女性蔑視発言でも、組織委や政府などから辞任を求める声が上がらなかったのは、森会長に頼りきりになる場面が多かったからだ。
森会長の辞任意向の報道を受けて、組織委幹部は「何でこんなことに」と肩を落とし、「国や都の役人が多いなかでスポーツにかける情熱が人一倍あった。無償で汗を流し、政治と調整し、1年延期の難しい判断やこれまでの準備も森会長だからできた」とふり返った。
(後略)