以下、朝日新聞デジタル版(2021/5/7 9:36)から。
人々の命と暮らしを守るために、東京五輪の開催中止を――。
弁護士で元日弁連会長の宇都宮健児さん(74)が5日、署名サイト「Change.org」を通じた署名活動を開始した。すると、7日午前9時の時点で、すでに18万人以上の署名が集まった。
なぜ、署名活動を始めたのか。宇都宮さんは次のように説明している。
「医療が逼迫(ひっぱく)し、ワクチンも行き渡らない中で五輪を開催すれば、国民の命と健康を犠牲にすることになる。世界的にもワクチンの接種状況、医療の充実度に格差がある状況で、公平な競争ができるのか。五輪はいったん中止すべきだ」
大型連休中の経験も後押しした。
宇都宮さんが主催する市民団体「反貧困ネットワーク」などは5月3日と5日、東京・四ツ谷の聖イグナチオ教会で日用品や食料を無償配布する「大人食堂」を開催した。約800人が列をなした。
「新型コロナウイルスの影響で住まいや仕事を失った人への支援がなおざりにされている。五輪中止で浮く予算は困窮した人たちへの支援に使うべきだ」との思いは強まったという。
報道各社の世論調査などでは「中止」や「再延期」を求める声が多い。ならば、「署名という具体的な行動で示すべきだと思った」と話す。
署名の宛先は、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長や菅義偉首相、東京都の小池百合子知事、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長ら。活動に期限は設けていないが、17日にバッハ会長の来日が予定されているため、その前に一度とりまとめて開催都市の東京都に提出する予定だ。
宇都宮さんは、過去3回の東京都知事選に立候補。署名活動は選挙で宇都宮さんを支援してきたグループが中心になっている。
宇都宮さんは、東京五輪の延期が決まった後に行われた昨年7月の都知事選で、東京五輪について「感染症の専門家が開催困難と判断すれば、IOCに中止を申し入れる」と訴えていた。(伊木緑)