「「五輪中止の選択肢はない」言い切る官邸 専門家はクギ」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/6/2 6:00)から。

 東京五輪日本選手団へのワクチン接種が「味の素ナショナルトレーニングセンター」(東京都北区)で1日、始まった。初日は選手ら約200人が接種。7月中旬までに約1600人の選手・関係者が2回の接種を終える見通しだ。日本選手団の総監督で、日本オリンピック委員会JOC)の尾県貢・選手強化本部長は「選手から『これで安心して競技ができる』との声があった」と話した。

 日本選手団へのワクチン接種もこの日開始され、大会への準備は加速している。医療体制への負荷や感染状況の予測が難しいことを踏まえ、「五輪が国民のためになるのか」(閣僚の一人)との危惧もあるが、官邸幹部は「中止の選択肢はない」と言い切る。

 「いよいよ、そういう時期がきた」。ある官邸幹部は、豪州選手団の来日で五輪に弾みをつけたい考えだ。加藤勝信官房長官は5月31日の記者会見で「大会が近づいてきているということの実感にもつながる」。大会組織委員会幹部も「これから入国する選手のニュースが増えれば、空気が変わってくるだろう」とみる。

 ただ、新型コロナの収束は依然、見通せない。1日付で経団連の新会長に就任した十倉雅和氏は、大会開催について「いま政府がワクチン接種を含めていろんな態勢をつくっている。それを見極めて、安全・安心な態勢ができた上で実施する。そうでなければ、なかなか世論的に難しいものがある」と指摘。安全・安心を見極める判断材料として、医療体制の逼迫(ひっぱく)が緩和されることなどを挙げた。

 そもそも、五輪開催の可否を判断する感染状況の基準が明確でないことが批判の対象にもなっている。

 専門家でつくる政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は1日の参院内閣委員会で、東京五輪パラリンピックについて、「緊急事態宣言を出すステージ4(感染爆発)で開催すれば、さらに医療への負担がかかるリスクがあるということは(分科会メンバーの)みなのだいたいの意見だ」と述べた。

 東京都医師会の尾崎治夫会長は、感染者が少ない豪州からワクチンを接種してきた選手団についてリスクは小さいとみる。ただ「かなりの数の自治体が事前合宿の受け入れを中止したのも事実。一部でうまくいっているから『きっと大丈夫だろう』というのは違う」と指摘する。尾崎会長は、コロナ下の東京で五輪を開催するなら「無観客から検討すべきだ」と訴えてきた。プロ野球などが有観客だから「五輪も大丈夫」と、なし崩しになるのを懸念する。