以下、朝日新聞デジタル版(2021/7/24 2:46)から。
新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、東京五輪が開幕する。コロナや熱中症の対応に追われる医療は、五輪の負荷にも耐えられるのか。五輪会場のすぐそばにある指定病院で、現場を見た。
ブラジル対ドイツなど、五輪サッカーの2試合が横浜国際総合競技場であった22日夕、隣にある横浜労災病院で、救急外来(ER)の「ホットライン」が鳴った。
救急車の受け入れを要請する電話だ。
高齢の女性が転び、頭から血が出ているという。受け入れの可否を判断する当直リーダーの早川達也医師(32)は、「お受けします」と応じた。
患者を運んできた救急隊員が、「きょうは五輪の試合がありますが、まだ患者を受けられますか」と問う。スタッフが「いつも通り受けるから大丈夫です」と返した。
病院は、五輪選手や大会スタッフらに何かあった場合に受け入れる約束をしている「大会指定病院」だ。
午後6時、自宅で発熱した10代の女性の受け入れ要請が入った。新型コロナウイルスの簡易検査をしたところ、陽性だったという。
医師や看護師が手早く防護服やゴーグルを身に着け、陰圧室で処置にあたる。
「心配になって119番したようです。入院まで必要なかったので、治療して帰宅してもらいました」と早川医師が言った。
陰圧室はウイルスを外に漏らさないように内部の気圧を低くした部屋で、五つある。次々に運ばれてくる患者で、いっぱいになった。
それでも、ホットラインは鳴りやまない。
この日は横浜市内で最高気温33.7度を記録し、熱中症や脱水症状が多い。けいれんした子どもも運ばれてきた。
「2歳の子ども。発熱、サチュレーション(動脈血酸素飽和度)低下」
「複数の小児をトリアージ中」
午後8時過ぎ、ERに早川医師の声が響く。
「ちょっと(受け入れを)セーブして。もう寝かせる場所がない」
看護師がそう語気を強めたとき、再びホットラインが鳴った。脳卒中の高齢患者がいるという。
(後略)
(枝松佑樹)