「日曜でも響く米軍の砲弾音 富士の裾野に広がる演習場」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/7/23 17:00)から。

 富士山の北東のふもと、山中湖畔の冬は寒い。最低気温がマイナス10度を下回る日もある。

 今年の2月7日は、朝方はマイナス5度まで冷え込んだものの、日中はぽかぽか陽気になった。湖の対岸に富士山を望む長池親水公園周辺では、日曜日で訪れた人たちがのんびりと過ごしていた。

 「ドン……、ドン」

 正午前、澄んだ空気を震わせる重低音があたりに鳴り響いた。最初は2回、続いて3回。終わったかと思うとさらに2回。

 「米軍が大砲を撃っているらしいよ」と、湖畔を歩く男性が連れの女性に告げる。「こわい。富士山を脅かしてる」と女性が応じた。

 富士山の裾野に広がる陸上自衛隊の北富士演習場で、米海兵隊が実弾射撃訓練をしていた。口径155ミリの砲弾を、発射地点から数キロ先の草原に撃ち込む訓練だ。

 訓練はかつて、沖縄の米軍基地キャンプ・ハンセンで行われていた。県道を越えて撃つので「県道104号越え」と呼ばれた実弾射撃訓練を、沖縄の基地負担軽減のため引き受けたのが始まりだ。1997年度から本土の演習場5カ所で年4回行われており、その1カ所が北富士演習場である。

世界遺産・富士山のふもとで「山梨の乱」が起きている。富士五湖の一つ山中湖畔にある別荘地をめぐり、別荘地を経営する富士急行に対して、土地を所有する山梨県がこれまで通りには貸せないと主張したのが発端だ。なぜ乱は起きたのか、どこへ向かうのか、富士山麓(さんろく)はだれのものなのか。連載の第4回です。

(後略)

(吉沢龍彦)