「死ぬかと思ったと警官証言 1月6日米議会襲撃の公聴会」

以下、BBC(2021/07/28/13:16)より。

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今年1月6日に起きた米連邦議会襲撃事件を調査する下院特別委員会が27日、初の公聴会を開いた。現場で議事堂を守った警官4人が証言し、その1人は自分が暴徒に押しつぶされるかと恐れたと述べた。

議会警察のアクイリノ・ゴネル巡査部長は涙ながらに、「自分はこうやって死ぬんだと思った」と証言した。

同様に出席したハリー・ダン警官は、自分が黒人のため、暴徒に人種差別の罵倒語を繰り返し浴びせられたと述べた。

ジョー・バイデン大統領(民主党)当選の議会認定を阻止しようとした大勢が議事堂に乱入し、警官1人を含む5人が死亡した事件後、少なくとも535人が逮捕されているが、有罪判決はまだ少ない。


民主党や一部の共和党議員は、当時のドナルド・トランプ大統領(共和党)が襲撃を扇動したと非難し、民主党多数の下院で弾劾したものの、与野党が拮抗する上院はこれを否決し、トランプ氏に無罪評決を出した。トランプ氏は自分は扇動などしていないと繰り返し主張。最近では、当日にホワイトハウス前で開いた集会は「平和的」で「たくさんの愛を感じた」などと発言している。

事件から半年以上たって始まった下院特別委員会の公聴会を、共和党議員のほとんどはボイコットしているが、以前からトランプ氏に批判的なリズ・チェイニー下院議員とアダム・キンジンガー下院議員は造反し、特別委の調査に参加している。

公聴会の冒頭でチェイニー議員は、「責任を持つ者たちが責任を問われないなら(中略)この国の立憲共和制にとって、がんであり続ける」と述べた。

チェイニー議員は、ディック・チェイニー元副大統領(共和党)の娘。有力保守派議員として下院共和党ナンバー3の地位にあったが、トランプ氏を批判したため今年5月、共和党の要職を追われた。

委員9人からなる特別委は、共和党が独立調査委員会の設置を拒否したため、民主党が多数を占める下院が設置した。米議会は、2001年9月11日の同時多発テロなど重大事について、独立調査委員会を設置することがある。

証人喚問の権限がある下院特別委は、議会襲撃に至った経緯や、なぜ議会警備が手薄だったのかなどを調べるとみられている。

「中世の戦場」

「ここで死ぬと思った」 警官が涙ながらに証言、1月6日米議会襲撃

ゴネル警官は当時の様子を、「中世の戦場」のようだったと公聴会で述べた。

議会警察の前は米兵としてイラク戦争にも参加しているゴネル氏は、当日帰宅した際、自分を抱きしめようとする妻を押し返すしかなかったと、涙を拭きながら下院で証言した。襲撃現場で散布された大量の化学薬品が、制服に染み込んでいたからだという。

ゴネル警官はその上で、共和党が当日の「真実を無視もしくは破壊」しようと「一貫して取り組んでいるのは衝撃的」だと非難した。

トランプ氏が当日の群衆を「とても愛にあふれた集団」だと呼んだことについてチェイニー議員に聞かれると、ゴネル警官は「自分は今でも、当日受けた大量のハグやキスから立ち直れずにいる」と皮肉をこめて答えた。

「あれがハグやキスだというなら、みんなして彼の家に行って、同じことをしてあげるべきだ」と警官は強い調子でトランプ氏を非難したものの、後に「勢いあまって発言」したことを謝り、誰かがトランプ氏のところに行くべきだと示唆したわけではないと述べた。

ダン警官は、「選挙が盗まれるのを防ぐために来た」と主張する乱入者たちに、自分はバイデン氏に投票したのだと伝え、「自分の票はどうでもいいのか? 自分は無視していいのか?」などと反論したと下院で話した。

「それを言ったとたん、人種差別の罵倒を大量に浴びせられた」とダン警官は証言した。「ピンクの『MAGA(アメリカをまた偉大にしよう)』シャツを着た女性が、『みんな聞いた? この(黒人に対する罵倒語)はジョー・バイデンに投票したんだって!』と叫んだ」のだという。

「自分が議会警察の制服を着ている最中に、(黒人に対する罵倒語)で呼ばれたことなど、それまで全く一度もなかった」と、ダン警官は話した。

自分が浴びせられた人種的な罵倒について、当日はその意味を受け止めきれなかったとダン警官は述べた。

「あの日はただ生き延びて、家に帰りたいと思っていた。でも後から振り返って、自分が何を言われたのかあらためて考えた時、本当に動揺した。自分の肌の色を理由に攻撃される、そんな国に生きているんだと思うと、とてつもなく残念で気落ちした」

「ただ他人を傷つけたい、それだけのためにあんな言葉を使う。ああいう言葉は武器だ」


「テロリスト」
議事堂の扉に挟まれて身動きが取れない状態で、暴徒に殴るけるされながら叫ぶ警官の動画が当時、大きな話題になった。ワシントン市警のダニエル・ホッジス警官は自分を映したこの映像を公聴会で見て、唇をふるわせながら、暴徒を繰り返し「テロリスト」と呼んだ。

「警察支援のシンボルのはずの『細い青い線』の旗が何度も見えたのに、テロリストは我々の指示を無視して、我々を攻撃し続けた。とことん混乱した」と、ホッジス警官は話した。

ワシントン市警のマイケル・ファノーン警官は下院特別委で、共和党議員たちは就任の誓いに背いているのが実に「みっともない」と強い調子で批判し、机をこぶしでたたいた。

トランプ氏弾劾に賛成した数少ない共和党議員の1人、キンジンガー議員は、涙をこらえながら共和党の同僚たちを批判しているように見えた。

「何があったのか正確にはまだ分からない。なぜか。自分が所属する党の大勢が、これはまたいつも通りの党派対立、政争に過ぎないという態度だからだ。きわめて悪質な態度で、(現場にいた)警官たち、その家族たちを軽んじる行為だ」と、キンジンガー議員は同僚議員たちを批判した。

(英語記事 Capitol riot: Policeman tells 6 January hearing he feared he would die)