以下、朝日新聞デジタル版(2021/8/11 11:19)から。
東京オリンピック(五輪)の開幕を15日後に控えた7月8日。深夜に始まった緊急の記者会見で、東京都の小池百合子知事は苦渋の表情を浮かべながら言った。
「感染拡大の防止に向ける観点から無観客とすることとなりました。断腸の思いでございます」
この日夜、国際オリンピック委員会(IOC)と国、都、大会組織委員会などが五輪の首都圏での無観客開催を決めた。
会見を見ていた都幹部の脳裏には懸念とともに、あるやり取りが浮かんだ。
「大会後の負担もお願いしますよ」
この幹部が首相官邸の関係者にそう言われたのは昨年12月。大会の1年延期で生じた追加費用2940億円の負担割合が、都1200億円、組織委1030億円、国710億円で合意した際の雑談だった。
無観客で懸念が現実に
「仮に大会が赤字になれば、都が負担してという意味だと理解した。無観客が決まり、まさにその懸念が現実になった」。幹部はそう振り返る。(後略)
感染爆発の中、これまでとはまったく様相が異なる五輪が幕を閉じました。コロナ対応が問われただけでなく、膨れ上がった費用、課題が浮き彫りになった理念、商業主義などと今後も向き合うことになります。残されたものは何かに迫る連載です。3回目では、大会後の負債穴埋めに直面する東京都の苦悩を描きます。
(軽部理人、岡戸佑樹、前田大輔)