題名に「物語アメリカの歴史」とあるように、概史・通史になっている。
たとえば、南部の箇所。
チャタヌガ・チュー・チュー。「南部と南部人」を後に書くことになるラルフ・マッギル。ナッシュビルのヴァンダービルト大学に入学するために学費を稼ごうと、青年ラルフ・マッギルは黒人チャーリーの助手として屋根葺きの仕事をする。仲良しになって、別れの際に、チャーリーの行動が見事だ。
”わたしを忘れないでおくれ”と彼はいった。”チャーリー、忘れたりするもんか。あんたはとてもいい人だ”と私はいった。
彼はちょっと後ずさりして、内ポケットに手を入れ、一枚の封筒を取り出した。
”汽車に乗って、駅から出るまではあけないように”と彼はいった。…
汽車が駅を離れたとき、私は封筒の封を切った。その中には折りたたんだ五ドル紙幣と走り書きの紙切れが入っていた。”私の助手が学校で使うために”
私は涙があふれてきた。 (「南部と南部人」より)