ライナーノーツという音楽番組がアルバム「E」を取り上げていたことがあり、これは奥田民生自身が言っていたことなのだが、われわれが責任もてるのはアルファベットくらいという意味が「E]という曲にあると聞いたことがある。この奥田の姿勢は気持ちがいい。
この曲の中では、血液型の「AB」、丸いのは「CD」、駐車場は「P」、痛いのは「BCG」、「ビートルズを生んだのはUK」と、まさにアルファベットが続いている。
ユニコーン時代では「SPRINGMAN」の「あやかりたい’65」という唄の歌詞が断然面白い。
外国に僕らはあこがれ
ジーパンとエレキを手にした
エビバデ 何かぱっと派手にやろうか
長髪もなかなかいけるぜ
これはある種の外国崇拝、つまり日本人の「拝外」主義だ。
私が興味あるアーティストは、日本ではOT*1だけれども、合州国では、なんといってもランディ=ニューマンである。それで、ランディ=ニューマンの唄には、例えていえば高田渡の「自衛隊に入ろう」的な唄がある。「差別しちゃおうぜ」的な毒のある歌詞が多いから、聴衆は「一体全体本人はどういうつもりで歌っているの」という気持ちにさせられ、モノを考えるようになるしかけになっている。誤解を恐れずいえば、「差別」には、「誘惑」もあって「おいしい」話だから、なかなかなくならないわけで、単純に「差別反対」という結論だけ歌っても、それでは真面目すぎて唄にならない。今の日本じゃ、「自衛隊に入ろう」も、すでに「風刺」にもシャレにもならないようだけれど、奥田民生の次の歌詞もかなりの「風刺」だと私は思っているのだけれど、おそらく「風刺」とはとられないところが、今の日本のダメなところじゃないかと私は見ている。
君たちも外人になりたくないか
スマートな外人になりたくないか
いまだに僕はずっとあこがれている
君たちも外人になりたくないか
「あやかりたい’65」(「スプリングマン」)
「ヒゲとボイン」の「日本へ行くの巻」でも、次のように、日本の「拝外」主義を歌っている。
あそこの女たちは
ブロンドに弱いから
見ただけでキスしてくれたよ
「日本へ行くの巻」(「ヒゲとボイン」)
さらにソロ活動に入ってからも、たとえば「29」で「外国産はひっこんでろ」(「BEEF」)と、関連するテーマが取り上げられている。
奥田民生は勉強家で戦略家だ。
ところで、奥田民生の近年のアルバム「GOLDBLEND」、「E」に続いて、10月6日発売予定の新譜のタイトルは「LION」である。タイトルに限っては、立て続けに英語になっているわけだが、これは、世界にも売りだそうとする戦略の一端なのだろうか。