「サプライズ」の2曲目"Everything About It Is A Love Song"(2006)

「サプライズ」

 一曲目と、うって変わって、二曲目は、ゆったりとしたメロディで始まり、次のように歌われる。


Locked in a struggle for the right combination---of words in a melody line,
I took a walk along the riverbank of my imagination
Golden clouds were shuffling the sunshine


メロディラインの中でぴったりくるコトバの組み合わせを探してもがき
自分の想像力の川の土手沿いを散歩した
金色の雲が日差しを混ぜていた


 実際、ポール=サイモンは、メロディが先で、そのメロディに歌詞をあてはめることが少なくないという*1
 そして、リズムが速くなり、次のように20世紀に想像がめぐらされる。
 あたかも時間の乗り物のようである。


But if I ever get back to the twentieth century,
guess I’ll have to pay off some debts
Open the book of my vanishing memory,
With its catalogue of regrets
Stand up for the deeds I did,
and those I didn’t do
Sit down, shut up, think about God,
And wait for the hour of my rescue


でも、20世紀に戻れるなら
借りを返さないといけない
消えつつある自分の記憶という本を開いて
あれやこれやの後悔のカタログとともに
立ち上がれ、私がした行動のために
そして私がしなかった行動のためにも
座れ、口を閉じろ、神について考えろ
そして自分の救済の時間を待つのだ



 これはポール=サイモンの20世紀に対する総括だろう。
 さらに、鼓動のようにリズムが少し激しくなって、次のように歌われる。
 これは、ポール=サイモンの感慨に違いない。


We don’t mean to mess things up,
but mess them up we do
And then it’s “Oh, I’m sorry.”
Here’s a smiling photograph of love when it was new
At birthday party


事態をめちゃくちゃにするつもりはないんだ
けど、そうしてしまっている
だから、「ご免なさい」
ここに、愛が芽生えたばかりの微笑んだ愛の写真がある
誕生日の


Make a wish and close your eyes: surprise, surprise, surprise


願い事をして、眼を閉じて
びっくり、びっくり、びっくり


 再びリズムがゆっくりとなって、冬のイメージがあらわれ、そして次のフレーズが繰り返されて、終わる。
 20世紀、自分なりに頑張ってきたけれど、何かできたろうか。そして今も何とかしようと思っているけれど、うまく行っているわけではない。あれこれあるけれど、結局、愛の唄というポール=サイモンのまとめを歌っているように思えるのだが、どうだろうか。
 アルバムタイトルのSurpriseは、この曲の歌詞から取られているのだろう。


And everything about it is a love song


全ては、愛の唄なのだ

*1:アパルトヘイト下の南アフリカの音楽家たちとの合作とも言えるGracelandは、南アフリカでベースなどリズム楽器を先に録音し、ニューヨークでアレンジ・編集した関係から、それまでになく、歌詞をあとで考えたという逸話もあるので、実際はよくわからない。Paul Simonが歌詞重視であることは間違いないが、音楽性に執着する音楽家であることも言うまでもない。