フィンランドと対照的に全体を引き上げようとしない日本の教育

 「競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書)」を読んで、そうだなと思ったことの一つは、次の記述だ。
 日本の学力の「最大の特徴は、レベル1未満という「きわめて低学力」とされる層が、一位のフィンランド、二位の韓国では一%台、三位のカナダでは二%台であるのに対して、日本は七.四%と、OECDの平均よりも多いことだ。平均以下(レベル2以下)の割合をとってみるとフィンランド、韓国は二〇%台であるのに対し、日本は四〇%ほどある。すなわち、日本はレベル1未満もしくはレベル1という低学力層が多い国になりつつあるのであり、順位の高い国はこの層がきわめて少ないという特徴がある」。
 つまり、日本の学力分布は、低い層はより低く、高い層はより高く分かれるという、いわゆる二極分化が進み、それで全体としての学力低下が進んでいるのである。
 この本に書いてあったことではないけれど、これは今の日本の経済格差とぴったり符合するのではないか。
 ひとつには、金儲けのどこが悪いというような倫理観の全く欠如した大人たちが日本のリーダーであることがごくごく普通のことで、社会全体の教育力が下がってきている。さらに、経済格差で、うすっぺらい「学力」で有名大学のブランドを金で買うような社会になってきている。ある有名私立大学で教壇に立っている知人のコトバだが、根拠のない自信家が少なくないという。ようするに実力もないのに、有名ブランド大学に入ったということで、プライドだけがインフレ傾向にあるというのだ。私なりのコトバで言えば、ようするに、日本は中味のない国になりつつあるのである。こうしたことで学力があがると思ったら、それは余程おめでたい人たちだ。
 お隣の韓国はガンバリズムで、詰め込みによる高学力路線をひたすら走っている。以前は日本も韓国と同じようだったが*1、今の日本は確実に格差社会による低学力路線を走っている。
 社会全体を普通のまっとうな社会にすることが学力保障の大前提と言えるだろう。

*1:競争やめたら学力世界一―フィンランド教育の成功 (朝日選書)によれば、韓国のできる学生は日本のような「指示待ち人間」は少なく、また韓国は応用力も強いと、日本との違いを指摘している記述があった。