これはすでに昔のことだが、Neil YoungのHarvestは、高校時代に愛聴した一枚だ*1。
Neil Youngは、その長いキャリアの中でヒット曲はほとんどないのだが、Heart of Goldは唯一の例外である。
Harvestの中に収められたHeart of Goldは、1972年に大ヒットしたけれど、Heart of Goldという唄は、いわばMOR(middle of the road)*2だ。
このHeart of Goldの中に、次のような箇所がある。
I’ve been in my mind, it’s such a fine line
That keeps me searching for a heart of gold
And I’m getting old
高校生だった私はこのI’ve been in my mind, it’s such a fine lineのイメージがつかめなかった。
実は、fine lineとは、「製図の細線」を意味するが、「紙一重の差」という意味にもなる。
この意味を知ったのは、後年、最新日米口語辞典*3で、次のような説明文を読んでからのことだった。
紙一重 (only) a fine line
fineはここでは「すばらしい」ではなく「細い」、lineはもちろん「線」だが、only a fine lineで「(非常に違っているように見えても)ほんのわずかの差(しかない)といった意の一つの決まった言い方として覚えておかれたい
(p.213)
先日紹介したピーター・バラカン(Peter Barakan)氏の「ロックの英詞を読む」でも、Neil Youngの"Heart of Gold"の解説があり、高校生の私を苦しめた一行について、次のように書かれてあった。
I’ve been in my mindは「自分の内面を探る」という意味。英語の表現としては特異な感じがします。続いてのit’s such a fine lineですが、これは「いいことをやろうとするかしないか、それを分ける細い線、つまり「どちらを選ぶのか、かなり微妙な選択」という意味でしょう。
a fine lineという語句は、たとえば、There’s a fine line between genius and insanity(madness).のように用いる。
この辺の微妙な違いがわかるかどうかは、外国語学習において「紙一重」の差であるかもしれないが、これがまた実はとてつもなく大きな差でもあるのだ。