ニールヤングのHarvestというアルバム

Harvest

 「Harvestは、これまでつくってきた中でおそらく一番洗練されたレコードだと思うけど、自分にとってはこれは本当に限定された形容詞なんだ。本当に洗練されている、でもそれだけ」( “I think Harvest was probably the finest record that I’ve made, but that’s really restricting adjective for me. It’s really fine…but that’s all.”) *1。ニールヤング自身がこう語るように、Harvestはいいレコードだ。けれども、そのうち物足りなくなるはずだ。Johnny Roganが”Neil Young”というその著作の中で解説しているように、「新しい作品の多くは、メロディックで、きれいで、非常に耳に心地よいが、内容が貧弱である」(”Much of the new work was melodic, pretty and eminently listenable, but lacked substance.”)と酷評しているが、こうしたコメントは偏見ではない。
 ナッシュビル録音、イギリスでのロンドン交響楽団との録音、UCLAのロイスホールでのライブ録音など、あちこちでの録音で構成されているけれど、最終的にはニールヤングが所有する牧場内の納屋をレコーディングスタジオにして、アルバムは完成された。
 その結果、ハーモニカ、バンジョー、スティールギター、ストリングス、オーケストラと、これまでになく多様な楽器を用いているが、Stray Gatorsという新しく編成されたバックバンドは、Jack Nitzsche(piano), Ben Keith(steel guitar), Tim Drummond(bass), Kenny Buttrey(drums)という編成で、セミアコースティックな乾いたギターの音とベースとドラムスを効かせた土臭い音作りが基調になっている。
 アルバムは、ソロコンサートであまり取り上げられることのないOut On the WeekendとHarvestで始まる。
次のA Man Needs A Maidは、ソロツアーでも定番として扱われた曲だ。
 A Man Needs A Maidは、“Diary Of A Mad Housewife”という映画に出演していた女優キャリースノッドグレス(Carrie Snodgress) がモチーフになっている*2。ソロツアーでは、今回のマッセイホールのライブでわかったのだが、ピアノだけで、Afraid---A man feels afraidと歌っていた。ただ、Harvestではピアノにくわえてロンドン交響楽団が演奏していて、「このアレンジはやり過ぎだという意見があるが、ボブディランは彼の好きなものの中のひとつだと言ってくれた」と、ニールヤング自身が語っているのが興味深い。
 ただ、そのディランも「孤独の旅路がラジオにかかると嫌になったね。ニールヤングはいつも好きだったのにね。でも孤独の旅路を聴くときはいつでも嫌になった」(“I used to hate it when it came on the radio. I always liked Neil Young, but it bothered me every time I listened to ‘Heart of Gold’.”)と語っている。
これもJohnny Roganを読んで初めて知ったのだが、Heart of Goldは、ポールモーリアの「恋はみずいろ」から曲想のヒントを得たという。言われてみれば、そんな気がする。ハープがアレンジされているのは、その影響かもしれない。
 さて、Heart of Goldはシングルでも売れに売れた。
 ニールヤングは、Heart of Goldについて次のように語っている。「この唄のおかげで道の真ん中に出たけど、そこを進むことはすぐ退屈になった。だから溝の方に向きを変えたんだ。ゴツゴツした乗り心地だったけど、だから興味深い奴らに会えたといえる」(“This song put me in the middle of the road. Travelling there soon became a bore, so I headed for the ditch. A rougher ride, but I saw some interesting people there.”)
 Old Manは、ニールヤングの牧場で知り合ったLouie Avilaをモチーフにしたもの。このことはすでに触れた。Heart of Goldと同様にOld Manは、ナッシュビルでJohnny Cash Showに出たときに、James Taylor, Linda Ronstadtとともにスタジオ入りして録音されたもので、このこともすでに書いた。
 Alabamaは、Harvestの中では、激しい曲想の唄のひとつである。歌い方の怒りは強くはないが、Alabamaのテーマは、Southern Manに近い。
 A Needle and the Damage Doneのneedleは言うまでもなくヘロイン注射のことで、Crazy HorseのDanny Whittenのことを歌っている*3。今回Johnny Roganを読んで興味深かったのは、「麻薬常習者はみな沈む太陽のようなもの」(”every junkie’s like a setting sun”)という比喩の解釈である。つまり、「沈みゆく太陽」は、「自然の中で最も美しく美的に喜ばしいイメージのひとつ」(“one of nature’s most beautiful and aesthetically pleasing images”)だから、瀕死の状態にある麻薬中毒者の比喩として適切ではなく、また受け入れがたいという。Johnny Roganは、「ドラッグを扱ったヤングの唄の中では最も砂糖でくるんだもの」(“the most sugar-coated of Young’s drug songs”)と結論づけている。
 Wordsは、StillsとNashが参加していて、演奏的に面白いところもあるが、ジャックニッチェが語っているように、歌詞はいまひとつのように思える。

*1:このfineをどのように訳すのか、むずかしいところだけれど、「洗練された」「上品な」「見事に調整された」というニュアンスが感じられる。

*2:その後ニールヤングは、キャリースノッドグレスと結婚し息子が生まれたが、その後離婚している。

*3:Danny Whittenは数年後にODで亡くなっている。Danny WhittenとBruce Berryの死によって、アルバムTONIGHT'S THE NIGHTが生まれることになる。