ニールヤングの三枚目であるAfter the Gold Rushで話題となった曲は何と言ってもSouthern Manだろう。言うまでもなく、これはアメリカ合州国南部の人種差別を糾弾した唄である。
このモチーフがどこから来たのか私は知らなかったがウィキペディアによれば、1969年にニールヤングがアラバマを訪れた際に、ロードハウスで飲んでいたら地元の二人に表に連れ出され、殴られた経験からだろうと言われているようだ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Southern_Man
このアルバムには、何かが壊れていく喪失感があり、アルバムジャケットもいい。もう少し言えば、60年代の理想主義の崩壊、夢の崩壊といっていいのかもしれない。
ジャケット裏のパッチワークのジーンズは、このAfter the Gold Rushが出る頃には別れてしまうのだが、トパンガ渓谷で一緒に暮らしていた奥さんのスーザンの作品。After the Gold Rushはトパンガ渓谷の精神を体現していると言われている。
After the Gold Rushというアルバムの評価は高いが、中でもAfter the Goldrushという曲の歌詞は、ニールヤングの傑作のひとつと言われている。楽器ではピアノとともにフレンチホルンが使われているのがめずらしいが、そんなことに気がつかないほど、しっくりと合っているのが不思議だ。
Don’t Let It Bring You Downは、都市の荒廃を歌っているが、これはCSNと一緒に出かけた1970年のロンドン公演の経験がきっかけとなっているという。
When You Dance I Can Really Loveの能天気なほど明るく華麗な唄のあとのI Believe In Youは、ガラリとムードを変え、楽観的な確信を失わせ、人間関係の深まりに対する恐怖を表現している。
シンガーソングライター全盛の時代にあって、シングルOnly Love Can Break Your Heartのようにコマーシャルなものもあるが、After the Gold Rushには、悲観的な暗さがある。カリスマ的存在(a cult figure)としてのニールヤングの契機になったアルバムでもある。
http://en.wikipedia.org/wiki/After_the_Gold_Rush