ニールヤングのEverybody Knows This Is Nowhere

Everybody Knows This is Nowhere

 昨日も書いたように、今回のLive at the Fillmore East (W/Dvd)のライブの1年ほど前にクレイジーホースとレコーディングを始めて1969年の5月に出したのがEverybody Knows This Is Nowhereである。
 1969年の1月に出したソロ一枚目のNeil Youngは多重録音を重ねたスタジオ盤の佳作だったが、これから比べると二枚目は、バンドとの一発取りという感じが強い。むき出しの生の音だ。クレイジーホースとの運命的出会いから自由に演奏しているニールヤングが印象的だ。
 Cinnamon Girl, Cowgirl In The Sand, Down By The Riverの三曲だが、ニールヤングが高熱にうなされて書いたという逸話があって、そのせいか、これらの歌詞は曖昧で夢見心地なところがある。
 とくに、Down By The Riverだが、意識の流れのように、まさにイメージであり、ニールヤング自身も「いやぁ、実際の殺人を歌っているわけじゃないよ」(”Naw, there’s no real murder in it”)と語っている。
 そして、コードはオープンDチューニングを中心にして、単純明快。ギターソロもとりやすい。インプロヴィゼーションでもって長く演奏もできる。気持ちを入れやすい自由さがある。
 スティーブンスティルスの影響からも逃れられたと言ってもいいのかもしれない。Buffalo Springfield時代のようないざこざ、誰がリーダーかという「民主的な」対等平等の関係もない。クレイジーホースはニールヤングのよき理解者であり、ニールヤングのバックバンドとしての機能を果たしているのだ。
 ニールヤング自身がこれは言っているのだが、ものすごく単純化していえば、CSNYビートルズだとすれば、Crazy Horseはローリングストーンズだという例えがある。そして、ニールヤングはローリングストーンズが好きなのだ。
 ニールヤングがCSNYで活動を始める際にも、クレイジーホースが文句を言った形跡はない。CSNYでの活動中はCSNYでの活動を尊重するが、クレイジーホースとの活動が取り止めになったわけではない。意識が分裂したかたちで活動することになるともいえるが、CSNYでの名声を手に入れながら、クレイジーホースで好きなことがやれるわけで、ニールヤングにとっては自由に自分の音楽がやれる舞台が整ったともいえる。
 今回のアーカイブ発売を機に、Johnny Roganの書いた"Neil Young: Zero to Sixty”を読んでいるのだが、いくつか初めて知ったことがある。
 このニールヤングの二枚目はアルバムジャケットも好きだったし、曲も大好きで高校時代によく聞いたものだが、それでも知らなかったことがたくさんある。
 例えば、このアルバムの中で、Running Dryで聞けるのが、クレイジーホースの前身ロケッツのBobby Notkoffだということ。Requiem For The Rockets(「ロケッツに対する鎮魂歌」)とサブタイトルがついているのはそういう意味だ。それと、Round and Roundという唄でフィーチャーされているRobin Laneは、Danny WhittenやNeil Youngのガールフレンドだったということ。これも知らなかった。