黒澤明監督の「悪い奴ほどよく眠る」を観た

悪い奴ほどよく眠る

 黒澤プロダクション第一作目。1960年製作。
 脚本は、小国英雄久板栄二郎黒澤明菊島隆三橋本忍
 黒澤映画を一本も見ていない方にお薦めしたい映画としては、「用心棒」や「椿三十郎 [DVD]」、そして大作の「七人の侍 [DVD]」など、人間というものを深く描きながら同時に活劇の面白さを両立させえている痛快娯楽時代劇がなんといってもお薦めだ。黒澤映画の現代劇なら、なんといっても傑作「生きる」だが、最初の一本となれば、やはり現代劇よりも時代劇ものを薦める。今回わたしは初めて「悪い奴ほどよく眠る [DVD]」を観たが、これはなかなかの力作だ。映画の冒頭で観客にかなりの情報提供をして全体の構図を俯瞰させる演出は黒澤流と言えるのだろう。中でもお葬式の場面を車内から見させる場面は素晴らしい。テープレコーダーを持ちこんで、会話とともに軽快な音楽を入れる演出も秀逸。白井課長の帰宅の描写は劇画調で、明暗の演出に唸ってしまう。これも絵コンテをきちんと描いているのだろう。話はフィクションであり、実際の汚職事件をモデルにはしていないようだが、汚職の容疑が上層部に波及しそうになると、自殺者が出て、それで真相究明が徹底されないという日本的政治風土がよく描かれている。
 まさに先日起こった松岡農水相の首つり自殺を予感させるような内容だが、現役大臣の自殺に日本の現代政治の深刻さがある。
 「悪い奴ほどよく眠る [DVD]」では、白井課長を西村晃が好演している。音楽担当は、佐藤勝。