5月29日付の朝日新聞の「私の視点」で、ロンドン在住の阿部菜穂子さんが、学力テストなど、「教育の国家管理を強める改革」が日本では進められているようだが、「日本がイギリスの教育改革を参考にするのなら、実情を正確に見た上でのことにして欲しい」として、イギリスでは、「教育現場を信頼する体制の構築に向けて大きな修正が始まっている」と紹介している。
以下、「私の視点」から引用する。
5月初め、議会特別顧問を務める教育学の権威、アラン・スミザーズ・バッキンガム大学教授は、同政権10年間の教育政策を総括して「政府は学校を自動車製造工場のように扱い、製品数の目標値を設定するように学校にテストの成績到達目標を課し、到達できなければ罰した」と批判した。
サッチャー改革依頼、教師たちが主張してきたのは「子どもたちを一番よく知っている教師の判断を信頼して欲しい」ということである。
イギリス本国で、すでに、こうした「サッチャー教育改革は過去のものとなった」と結論づけて、次のように阿部さんは続けている。
一方、教育の市場化とは対極的な手法で成果を上げているのは、経済協力開発機構(OECD)の15歳児学習到達度調査「PISA」で「学力世界一」の評判を定着させたフィンランドである。昨秋この国の教育を取材したが、その大きな特徴は行政や社会が教師と学校を深く信頼し、教育の進め方に大きな自由を与えている点にあった。教師は生き生きと教え、子どもたちはよく学ぶ。
見られるように、大切な点は「教育の自由」である。
阿部さんは最後に、次のように書いている。
最近発表された国連児童基金(ユニセフ)による子どもたちの「幸福度」調査(21カ国が対象)で、フィンランドはトップグループ、イギリスは最下位だった。この結果をイギリス社会は深刻に受け止め、教育のあり方を見直す議論に発展させているのである。
日本は、まだ気づいてもいないということになりますね、これでは。