「内部通報、暗い告げ口ではない」

amamu2007-09-20

 今朝の朝日新聞に、編集委員・安井孝之氏の書かれた「内部通報、暗い告げ口ではない」という面白い記事が載っていた。
 少し長くなるが、全文を引用しておきたい。

 北海道の人気土産「白い恋人」が店頭から消えて、1カ月以上過ぎた。製造・販売する石屋製菓(札幌市)の商品が店頭に戻るめどは立たない。だが、時計の針を6月に戻し、その時の対応が間違っていなければ、「白い恋人」は姿を消さずにすんだかもしれない。
 匿名で社員とみられる人物が、同社の通販申し込み用のメールアドレスに「賞味期限の改ざん」を伝えてきたのは、6月20日ごろ。同社には社員が「通報窓口」に不祥事などを伝える内部通報制度はなかったが、現場の不正行為を幹部に伝えようとした社員がいたのだ。しかし、報告を受けた統括部長は動かなかった。1カ月余り後の8月9日に同じ情報が札幌市保健所に伝わり、改ざん事件が発覚し、対応は後手に回った。
 もしも石屋製菓が、メールが来た時点で社内調査に乗り出し、自ら事実を発表、是正に取り組む姿勢を示していたなら、「賞味期限の改ざん」は許せない行為ではあったが、消費者や当局の見方は大きく変わっただろう。
 企業不祥事問題に詳しい国広正弁護士は「社内の不正行為を社内で把握する内部通報の仕組みがしっかり機能し、自浄作用があるなら、会社は救われるが、情報を外に流す内部告発から不祥事が明らかになるような場合、会社が受けるダメージは計り知れない」と指摘する。
 会社の中にはいろんなリスクが転がっている。人の判断に完璧はなく、間違いはつきものだ。不正行為やミスをゼロにすることは不可能で、むしろそういった事実を素早く把握すれば、経営改善につながるきっかけになると考えるべきだ。
 社内の風通しがよくて、上司の不正も面と向かって指摘できる風土が理想だが、現実はそうはいかない。社員の「告発」の多くは会社を良くしようというやむにやまれぬ思いが発端になっていることが多いという。国広弁護士は「内部通報を『暗い告げ口』ととらえるべきではない。リスク管理の一つの仕組みと前向きに考えるべきだ」と話している。