以下、朝日新聞デジタル版(4/20(金) 6:52配信)から。
「社会的に責任の重い立場にある福田氏が、優越的な立場に乗じて行ったセクハラ行為は、当社として到底看過できません」
「正常な取材活動による国民への情報提供を目的とする報道機関全体にとっても由々しきこと」
19日未明の記者会見で、女性社員が取材の過程で財務省の福田淳一事務次官から度重なるセクハラ被害を受けていたと公表したテレビ朝日は同日夜、財務省に抗議文を出した。
テレ朝によると、女性は1年半ほど前から、取材目的で福田氏と2人で複数回会食。そのたびにセクハラ発言があったことから、「身を守るため」に会話の録音を始めたという。今月4日も福田氏と取材のため会食。そこでもセクハラ発言があり、途中からやりとりを録音した。後日、その事実を報じるよう上司に掛け合ったが、二次被害の恐れを理由に報道は難しいと告げられたという。
女性は「社会的責任の重い立場にある人の不適切行為が表に出ないと、セクハラ被害が黙認され続ける」と感じ、週刊新潮に連絡。取材を受けた上で、後日、今月4日の分を含む複数の録音データを提供した。
テレ朝も録音の内容を確認し、社員のやりとりであることを裏づけた。
女性は精神的に大きなショックを受けているといい、「(福田氏が)ハラスメントの事実を認めないまま辞意を表明したことをとても残念に思う」と話しているという。財務省に対しては調査を続けて事実関係を明らかにするよう求め、「すべての女性が働きやすい社会になってほしい」とも語った。
今回無断で録音したデータが第三者の週刊新潮に渡ったことについて、取材源の秘匿など報道倫理上の問題を指摘する声もある。記者会見で篠塚浩取締役報道局長も「取材活動で得た情報を第三者に渡したことは報道機関として不適切な行為」と述べた。女性は第三者への提供については反省しながらも、録音については「(セクハラ被害を)上司に説明するために必要だった」と説明したという。
専修大学の山田健太教授(言論法)は、今回の女性の行動について「人権侵害を防ぐための公益通報のようなもので問題ない」と指摘。取材内容を第三者に渡してはならないという原則は「取材先との信頼関係を保つための記者倫理であり、加害被害の構図といえる今回の関係においては当てはまらない」と話す。
一方で今回、上司への相談直後に抗議などが出来なかったテレ朝については「社会に根強く残るセクハラを許容する風潮を変える機会を逸し、残念だ。これは報道機関に共通する課題。これを機に各社とも、社内体制と報道姿勢自体を見直すことを願う」と話した。(湊彬子、河村能宏)