山田洋次監督の映画「息子」を久しぶりに観た

息子

 「映画監督50周年記念企画」として山田洋次監督の名作映画DVDマガジンが発行されている。
 Vol.8の映画「息子」の紹介としては、「バブル絶頂期に描かれたもうひとつの『東京家族』」と書いてあるが、これはなかなか的確なコピーだ。映画「息子」は前に見たことがあるが、今回久しぶりに観て、最近封切られた「東京家族」と同様に小津の「東京物語」を山田洋次は意識していただろうと感じたからだ。
 その意味で、映画「息子」は、「東京家族」に近い。
 というよりも、20年以上も前から、山田洋次監督のモチーフはずっと長年温められていたということなのだろう。
 おそらく小津監督への思いも、長年のものなのであろう。
 物語やストーリーということはともかく、以前見たときには、映画「息子」の、映像による表現のすばらしさに気づかなかった。
 DVDマガジンの別のコピーに「頑固親父」「不肖の息子」とあるが、そうしたステレオタイプの表現は的確でない。
 岩手県、東京、鉄工場など、それぞれの職場。映画「息子」の細かい表現・演出は大変細やかで丁寧である。
 そして、監督の思いを表現すべく、それを演じる俳優陣。
 わけても三國連太郎永瀬正敏和久井映見いかりや長介、そして田中邦衛が素晴らしい。
 久しぶりに観て、映画「息子」は、たいへん完成度の高い作品であることに気づかされた。スタッフの総合力の産物であろう。映画が総合芸術と言われるゆえんである。
 1991年公開。