「44年目のカレーライス」を聴いた

恋の歌

 遠藤賢司の新譜「恋の歌」の「44年目のカレーライス」を聴いた。
 俺が高校生のとき、遠藤賢司のアルバム「満足できるかな」が愛聴盤の一枚だった。
 はっぴいえんどがバックをつとめる「満足できるかな」のリズム感はゾクゾクするほど凄いものだった。
 アコースティック1本でやる「カレーライス」も好きだった。
 そして今回の新譜「恋の歌」の中の「44年目のカレーライス」。
 その表現力にうなった。
 まず、アコースティックギターがいい。
 1971年の「カレーライス」のメロディも解体・再構築されて、今回の「44年目のカレーライス」のアルペジオの中の、そこここに聴こえる。
 そして、その歌詞がすごい。
 最初と最後の「若くて綺麗な女優さん」の箇所では、俺が高校生のときの同じく愛聴盤であったNeil Youngの"Harvest"の中の"A Man Needs A Maid"の一節をなぜか思い出した。

 While ago somewhere I don't know when
 I was watchin' a movie with a friend
 I fell in love with the actress
 She was playin' a part that I could understand

 「歌のなかの君とは別れ」、猫の「寝図美」ちゃんも死んでしまったようだけれど、「今の女(ヒト)」のも「美味しいカレーライス」とうたわれる。
 生と死や別れのモチーフに触れてから、ぼそぼそとつぶやくように次のように続く。

 そう僕の願いはただひとつ
 そんな小さな子に赤ちゃんに
 これからの若い人に

 美味しい空気を
 たらふく食べさせてあげたいな
 そしてたくさん恋をしてほしい

 つくづく思うんだ
 この日本はもっと綺麗で
 もっと美味しい国だったんだよ
 だからもうこれ以上 穢(けが)さないで!

 そのあと、「…仲間や友達が次々と死んじゃう」中で、「言音一致の純音楽家遠賢」としての決意がうたわれる。

 でも次は僕じゃないよ
 なおさら命を張って
 音楽だけは頑張るよ

 5分38秒の「44年目のカレーライス」は何度でも聴きたくなるすごい唄だ。