「財務省、答弁の裏で意図的廃棄 「政治史に残る大事件」」

amamu2018-05-24

 以下、朝日新聞デジタル版(2018年5月24日09時46分)から。

 国会答弁の裏で、決裁文書を改ざんするだけでなく、交渉記録を意図的に廃棄していた。森友学園問題で財務省が23日、衝撃的な事実を明らかにした。この日公表された文書からは、土地取引の特異さが改めて浮かぶ。財務省の体質に、市民が、国会議員が、怒りの声を上げた。

 23日午前、国会内では、財務省から交渉記録の廃棄を説明された野党議員が憤りの声を上げた。

 「行政の信頼を根こそぎ失うような政治史に残る大事件だ」。国民民主党玉木雄一郎共同代表は記者団にこう語り、「これまで1年にわたり政府が説明してきたことが虚偽だと明らかになった」と断じた。

 財務省は、森友学園との土地取引について国会で一貫し、学園側との交渉記録は保存期間がすぎて廃棄した、と主張してきた。ただ、この日は、昨年2月以降に「国会答弁との関係で文書を廃棄」していたと明かした。

 立憲民主党逢坂誠二氏は「国民をだまし続けた。だまされた中で我々は質問せざるをえない。どこが民主的国家なのか」と憤り、「監督する財務大臣の積極的な反省の弁がないことも驚きだ」と麻生太郎財務相の対応ぶりに疑問符をつけた。

 国民民主党今井雅人氏は、日本大アメフト部のタックル問題を引き合いに、「選手がおわびして、語った。官僚の中に日大の選手を見習う人が出てほしい」と述べた。

 午後には野党各党が国会内で合同ヒアリングを開き財務省幹部を追及。ただ、財務省側は言葉を濁す場面が目立った。

 誰が廃棄に関与したのか問われると、富山一成・理財局次長は「指示したのは理財局の一部職員だと考えている」。細部は「誰がどういう指示を誰に(出した)かは人事当局の調査結果を待つ」と下を向いた。

 公表された交渉記録は、職員が「手控え」として紙やパソコンで保管していたものだが、なぜ1年前に見つからなかったかについても「(職員に)聞き取りをしたかどうかも含めて、調査結果を待つ必要がある」とした。廃棄されたまま見つかっていない文書がある可能性も指摘されたが、明確な答えはなかった。

 富山次長は「国会答弁での説明が事実と異なっていた。深くおわび申し上げたい」と述べたが、その説明は最後まで煮え切らなかった。

 玉木氏は記者団に「平成という時代の歴史に残る事件だと思う。現職の総理夫人の名前がそこに出てくる。改めて真相究明に向け、政府の責任が厳しく問われる」と語気を強めた。

 今回、交渉記録を確認した経緯については、「検察の協力も得た」と明らかにした。

「文書存在判明」本社記者に電話

 財務省は23日、森友学園との国有地取引をめぐる記録を情報公開請求していた朝日新聞記者に対し、「昨年4月に文書がないと回答したが、存在が判明した」と電話で連絡した。

 記者は昨年3月、「土地取引に関する文書一式」と「森友学園関係者と財務省理財局幹部との面会記録や協議内容」の2件について、情報公開を請求。同省は翌4月、「文書の保有が確認できなかった」として不開示としていた。

 今回の連絡について、同省理財局は「行政サービスの一環。今回は丁寧に説明する必要があると判断した」としている。同様の情報公開を請求した人に、電話連絡をしているという。同局は、文書を「ホームページに掲載した」と説明。いったんは掲載されたが、23日午後11時現在、見ることはできなかった。

「誰の指示か解明を」関係者

 森友問題を追及してきた関係者らからは憤りの声が上がった。

 交渉記録の開示を請求していた神戸学院大の上脇博之教授は「公文書は民主主義を支える知的資源。廃棄、改ざんがまかり通れば民主主義が成り立たない」と指摘。交渉記録だけで1千ページ近くに上る点に触れ、「個人の手控えと言うには分量が多すぎる。首相夫妻案件であることを隠し、国会答弁との整合性をもたせるために、文書の廃棄と改ざんがセットで行われた疑いが強い。政治家の関与を含め誰の指示で廃棄されたのかを解明しないと説明がつかない」と話す。

 「昨年3月から交渉記録は絶対にあると言い続けてきた。1年間無駄にされた」と憤るのは、木村真大阪府豊中市議。国有地を不当に安価で売却したとする背任容疑で近畿財務局職員を告発していた。

 安倍晋三首相の妻昭恵氏付の政府職員が、土地取引での優遇を望む森友学園の意向を財務省に伝えていた記録も明らかになった。木村市議は「昭恵さんが動かなければこれほどの値引きはないはず。関与の度合いはどうだったのか、法的に問題はないのか。今後、司法や国会の場で明らかにしていく必要がある」と主張した。

 財務省の担当者らを背任などの容疑で刑事告発している阪口徳雄弁護士は昨年3月と9月、財務省森友学園の土地取引を巡って情報公開を請求したが、交渉記録や面談記録は開示されなかった。「なぜこれほどの改ざん、隠蔽(いんぺい)が行われたのか。国家賠償請求を提訴して、公開の法廷で納得するまで真相解明を追求したい」と反発した。国会答弁にあわせて記録を廃棄していた点についても、公用文書等毀棄(きき)容疑で追加告発を検討するという。

 (後略)