以下、朝日新聞デジタル版(
海に流れ出たプラスチックごみが砕けた微小な粒「マイクロプラスチック」。有害な化学物質を吸着しやすく、生態系への影響が懸念されている。海の生きものだけでなく、すでに人間の暮らしに深く入り込んでいる。
人間の口に入るものから、マイクロプラスチックが検出される例が相次いでいる。
英ブルネル大は2018年、英国のスーパー8店で売られている貝を調べたところ、すべての貝からマイクロプラスチックが検出されたと発表した。推計でムール貝100グラムあたり70個が含まれているとみられる。日本でも東京農工大の高田秀重教授らが、東京湾でイワシやムール貝の一種、ムラサキイガイなどから検出しているという。
水道水を調査したのは米ミネソタ大の研究チーム。米国や英国、イタリア、キューバ、インドなど14カ国159カ所の水道水を調べたところ、イタリア以外の13カ国の水道水からマイクロプラスチックが検出された。研究チームは「米国など先進国でも多く検出されており、一概に浄水設備の問題とは言えない。様々な要因が関係していそうだ」とみている。
マレーシアやフランス、英国などの国際研究チームは、マレーシアで販売されている食塩を調べた。豪州や日本、フランスなど8カ国で製造されたものからマイクロプラスチックが検出された。研究チームは「健康に影響が出る量ではなかったが、体内に蓄積されるので引き続き調べていく必要がある」と話している。
マイクロプラスチックはすでに人間の体内に取り込まれている。
オーストリアの研究チームが日本、英国、イタリア、オランダ、オーストリア、ポーランド、フィンランド、ロシアの計8人の大便を調べたところ、すべてからマイクロプラスチックを検出した。便10グラムあたり平均20個が見つかった。
こうした情報を収集している欧州食品安全機関(EFSA)は「マイクロプラスチックの人間の体内での挙動や毒性を明らかにするにはデータが十分でなく、有害かどうかを言及するのは時期尚早だ」との見解を公表している。だが、東京農工大の高田教授らの研究では、魚を食べている海鳥の体内にマイクロプラスチックが原因とみられる有害物質が蓄積していることが分かっている。(杉本崇)