「IR反対、山下ふ頭利用の港運協会「立ち退かない」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019年8月25日16時0分)から。

 横浜市の林文子市長がカジノを含む統合型リゾート(IR)の横浜港・山下ふ頭(中区、47ヘクタール)への誘致を表明したのを受け、山下ふ頭などを利用する港湾運送事業者約240社でつくる横浜港運協会の藤木幸夫会長(89)は23日、記者会見を開き、「山下ふ頭をばくち場にはしない」と述べ、改めてIR誘致に反対し、「カジノなし」での山下ふ頭の再開発を目指す考えを示した。

 藤木氏は「山下ふ頭は我々の聖地。ここで汗を流し、死んでいった港の先輩たちが『横浜の将来をちゃんとしろよ。ばくち場をつくるんじゃないよ』と私に言わせている。(海外のIR事業者が)我が物顔で使おうとするなんて冗談じゃない」と強い調子で語った。山下ふ頭は市有地が大半を占め、事業者の倉庫や事務所の多くはその上に建つが、立ち退くことはないとも強調。一方で、カジノ反対の市民運動とは一線を画し、「港湾人として動く」とも話した。

 また、自らも数年前はIR推進の立場だったが、ギャンブル依存症の実情などを知って反対に転じたとし、「カジノは『未知との遭遇』。市民はまだよく知らない。市民一人ひとりがよく考え、判断すべきだ」と述べた。

 港運協会などは6月、林市長あてに、IR誘致の断念を求める要望書を提出。大規模な国際展示場を核に、大型クルーズ船の拠点や中長期滞在型ホテル、コンサートホールなどを山下ふ頭に設ける「カジノなし」の再開発構想を打ち出し、自動車のF1レースや「ディズニークルーズ」の誘致なども掲げてきた。

 会見で藤木氏は「我々のお願いに対する返事もくれないうちに、林市長は(IR誘致を発表し)私の顔に泥を塗った」と批判した。

 会見に同席した港運協会の水上裕之常務理事は、「IR開業後、最大で年1200億円の増収効果が市にもたらされる」との試算を22日に市が公表したことについて、「その金はどこから来るのか。市民にギャンブルさせて金を吸い上げるのだとしたら、タコが自分の足を食っている状態。健全な経済とは言えない」と指摘した。(武井宏之

「経済に寄与」 商議所幹部・有識者が討論
 「横浜にIRを誘致するために」と題するパネルディスカッションが23日夜、横浜市西区で開かれた。経済政策を議論・提言する「横浜経済人会議」(横浜青年会議所主催)の中のプログラムで、横浜商工会議所の川本守彦副会頭ら3人が登壇。パネリストからは、横浜市のIR誘致表明を歓迎する声が上がった。

 川本副会頭は、「横浜の持続的発展には観光産業が必要」とし、IRを「国内外からの観光客を呼び込み、地域経済に大きく寄与する」と評価。「IR実現に尽力する」として「横浜IR推進協議会(仮称)」を設立する意向を示した。

 横浜国立大大学院の川添裕教授は、昨年までの4年間、毎年IR誘致に関する市民の意識を調査した結果を紹介。年々肯定的な意見が増えていることに触れ、「横浜は元々ビジターの刺激によって出来上がった町。危機的状況の中で、IRを超えるキラーコンテンツはない」とした。

 東洋大大学院の美原融客員教授は、「横浜にとっての潜在的魅力を最大限引き出す仕組みがIR」と評価。「IRのメリット、デメリットが市民に理解されていない」とした上で、現状の議論は「感情論的だ」と指摘した。(土屋香乃子)