「ウィーンの日本展、内容理由に大使館が友好事業取り消し」

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以下、朝日新聞デジタル版(2019/11/7 7:05)から。

 オーストリアのウィーンで開かれている展覧会「ジャパン・アンリミテッド」をめぐり、在オーストリア日本大使館が10月末、展示内容を理由に、両国の友好150周年事業としての認定を取り消していたことがわかった。展覧会には日本の戦争責任や東京電力福島第一原発事故に触れた作品が出品されているが、大使館は「友好を促進するとの要件に合致しない」とのみ理由を説明している。

 展覧会はウィーン中心部の複合芸術施設「ミュージアム・クォーター」が主催。オーストリア外務省が協力し9月下旬に始まった。両国は今年で国交樹立150周年。認定を受けた記念事業は、日本政府の支援を意味するロゴマークを使用できる。今回の展覧会に日本の資金助成はない。展覧会は11月下旬まで予定通り続けられる。

 展示の中には、安倍晋三首相に似せた日本の総理大臣を名乗る人物が鎖国を訴えたり、過去の戦争について中国と韓国に謝罪したりする美術家の会田誠氏の動画作品や、東京電力福島第一原発事故の謝罪会見を題材にした作品がある。

 一時中止になった国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」に参加した芸術家集団「Chim↑Pom(チンポム)」なども参加している。

 大使館によると、今年1月に認定をしたが、展示についての問い合わせや批判が寄せられたため、内容を改めて検討。10月30日付で認定を取り消し、主催者側に伝えた。「両国の相互理解を深め、友好を促進するという要件に合致しない」というのが理由で、個別の作品にはコメントしないとしている。外務省全体としての判断だという。

 展覧会のキュレーター(展示企画者)を務めるイタリア人のマルチェロ・ファラベゴリ氏は「あいちトリエンナーレと共通の参加者がいたため、我々の展覧会がツイッターで攻撃されるようになった」と語り、それが大使館の認定取り消しにつながったとの見方を示した。参加芸術家のリストを6月末の段階で大使館側に送り、開幕時には大使館職員も訪れていたという。

 同氏は展覧会の趣旨について「日本を悪く言うのが目的ではなく、日本社会が複雑で多くの問題があることを示したかった」と語った。日本では多くの人の目に触れる形で表現することが難しいような、社会批評を含む作品を見せることも目的の一つだったという。

 一方で「慰安婦(像)は見せないことにした。日韓関係に深い溝ができているので、刺激的になりすぎないようにした」とも述べた。主催者側でも事前に作品をチェックしたという。

 主催者は6日、「ミュージアム・クォーターはコスモポリタニズム(世界市民主義)、芸術の自由、表現の自由の中心だ。その観点から、ここでの他の展覧会と同じように『ジャパン・アンリミテッド』も尊重されるべきだ」などとする声明を発表した。(ウィーン=吉武祐)