以下、朝日新聞デジタル版(2019/12/18 5:00)から。
2020年度に始まる大学入学共通テストをめぐり、萩生田光一文部科学相の「身の丈」発言をきっかけに英語民間試験の活用が見送られて2カ月足らず。今度は、共通テストのもう一つの看板だった国語と数学の記述式問題にも飛び火した。1970年代にさかのぼる大学入試改革の先行きは混迷を極めている。
受験生のことを考えるなら、見送り表明が遅すぎたのではないか――。
17日の会見。萩生田氏は記者からそう問われると、うつむいて15秒ほど沈黙した。秘書官が資料を渡したのち、「いたずらに時間を延ばしたわけではない。できる限りの努力をしてこの年末が限界だと判断した」と語った。
今国会では大学入試改革の柱である記述式問題に批判が集中した。野党が1万人近い採点態勢への懸念や自己採点の難しさなどを繰り返し追及。採点関連の事業を担うベネッセグループが、それを模試などの営業活動に利用した疑いも浮上した。萩生田氏は国会で「一つ一つ受験生の不安の払拭(ふっしょく)をする作業を続けている」と述べた。
大学入学共通テストの導入は、1979年に始まった「共通1次試験」、90年からの「大学入試センター試験」に続く大改革と位置付けられる。第2次安倍政権が設けた教育再生実行会議が、共通テストにつながる入試制度の変更を提言したのが13年。以来、文科省が最も力を入れる教育政策の一つとして6年余りを費やしてきた。最大の目玉が記述式問題の導入だった。
今年9月に文科相に就任した萩生田氏が英語民間試験についてテレビ番組で「身の丈に合わせてがんばってもらえば」と発言。受験生の住む地域や経済状況による受験機会の格差が避けられないことが広く知れわたり、11月1日に延期に追い込まれた。矛先は記述式問題にも向かい、元々あった制度の欠陥に対する批判や不満が各層から噴出した。
(後略)
(矢島大輔、松山尚幹、石井潤一郎 宮坂麻子、宮崎亮、増谷文生)