「福島第一原発の処理水放出案、地元が懸念 国の意見聴取」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年4月6日 21時42分)から。

東京電力福島第一原発にたまる処理済み汚染水の処分方法について、政府は6日、福島市内で地元首長ら10人から意見を聴く会を開いた。海か大気中への放出を「現実的」とする経済産業省の小委員会の提言を受け、初めて開催した。風評被害への懸念は根強く、放出に反対する声や補償を求める意見などが相次いだ。
 約120万トンに達する処理済み汚染水は、多核種除去設備(ALPS)などで二次処理をしても、トリチウムという放射性物質が取り切れずに残る。提言は、薄めて海か大気に放出する2案に絞り込んだ上で、海の方が技術的には「確実に実施できる」と有力視。政府が地元などの意見を聴き、風評対策も含めた処分方針を決めるよう求めた。
 県漁業協同組合連合会の野崎哲会長は、国による水産物の出荷制限が2月に全面解除され、漁業の復興や世代交代にとって重要な時期にあると指摘。「福島の漁業者として反対する立場を主張したい」などと述べた。県森林組合連合会の秋元公夫会長も、事故の影響が今も続いているとして「新たな放射性物質の放出には反対」と表明した。
 一方、県旅館ホテル生活衛生同業組合の小井戸英典理事長は放出による被害を「故意の加害行為による損失」と指摘。放出が終わるまで損失補塡(ほてん)などを講じるよう求めた。飯舘村菅野典雄村長らも賠償や補償などの対応を要望した。
 内堀雅雄知事は国と東電に対し、「風評対策と正確な情報発信の2点に責任を持って取り組むことが重要」などと求めた。東電は、風評被害には「適切に賠償対応する」との立場だが、具体的な条件などは明らかにしていない。

 処理済み汚染水の処分をめぐっては、経産省小委が2018年8月に福島県で一般市民が参加できる公聴会を開いたが、トリチウム以外にも基準を超える放射性物質が残る水が大半だったことで、反発を招いた経緯がある。政府は今回、意見を聴く対象を首長や団体の代表に限り、市民の参加を受け付けなかった。
 今回の座長を務めた松本洋平・経産副大臣は「賠償も含め、意見は受け止めていきたい」と話した。政府は来週以降も自治体首長らから意見を聴く予定。放出に必要な設備の準備には2年程度かかるとされる。東電の現在の計画では22年夏ごろにタンクが満杯になる見込みで、今夏ごろが判断時期になるとみられている。