「救急医療「崩壊すでに実感」、受け入れ困難 2学会声明  新型コロナウイルス」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年4月10日 19時00分)から。

 

新型コロナウイルスの感染拡大で、脳卒中などの重症患者を救命救急センターが受け入れられない事態が起きているとの声明を、日本救急医学会と日本臨床救急医学会が9日、公表した。医療従事者が使う感染防護具も圧倒的に不足し、救急医療体制の崩壊を「すでに実感している」と危機感をあらわにしている。
 声明では、発熱やせきの症状がある患者を受け入れる病院が少なくなり、救急搬送先の病院が決まらない事例が増えていると指摘。地域の救急医療の「最後のとりで」となる救命救急センターがこうした患者も引き受けることになり、センターが本来診る重症患者の受け入れができない事態になっているとした。脳卒中心筋梗塞(こうそく)、重い外傷の患者は、特に処置を急ぐ必要があり、「治療のタイミングを逸することが危惧される」と訴えている。
 また、けがや新型コロナウイルス感染症ではない病気で搬送された患者で、後に感染がわかる事例も増えていると指摘。迅速な検査体制が必要だとした。また、感染を防ぐための医療用マスクやガウンは圧倒的に不足しており、新型コロナ感染症の患者への対応も「極めて困難な段階」に至っている、としている。
 日本救急医学会代表理事の嶋津岳士・大阪大教授は取材に「医療崩壊は医療の入り口にあたる救急部門から始まる」と指摘。肺炎が疑われる高齢患者が、十数件の医療機関に搬送を断られる事例もあったとして、「このままでは1分1秒を争う患者さんの命を救えなくなる」と語った。
 学会が会員に行ったアンケートには、発熱があっても「たらい回し」にされて遠隔地から搬送される患者が相次いでいるという報告や、ふらふらして転倒し、救急搬送された患者の感染が後に判明したという実例も寄せられた。家族への感染を恐れ「帰るのが怖い」という医療スタッフのメンタルケアを求める声もあったという。
 学会は、防護装備の充実などの要望と併せ、来週にも国に意見を伝える方針という。(野口憲太)