以下、朝日新聞デジタル版(2020年4月9日 5時00分)から。
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、与党が「緊急事態における国会機能の確保」をテーマに早急な憲法論議を呼びかけ始めた。ただ、与党の提案には、新型コロナ対応を口実に停滞する憲法論議を動かす狙いも透ける。野党は目の前の対策を優先すべきだとして、与党を批判している。
衆院憲法審査会の再開をめざす自民党の新藤義孝・与党筆頭幹事は3日、立憲民主党の山花郁夫・野党筆頭幹事と会談。「新型コロナウイルス感染症と憲法論議について」と題したペーパーを手渡し、「早急に憲法審で議論する必要があるのではないか」と求めた。
ペーパーは、本会議の議決に3分の1以上の議員の出席が必要とする「定足数」や、衆院議員の任期といった憲法の規定に言及。感染が広がり定足数を割り込んだり、来年10月21日までの任期中に選挙ができなかったりした場合の対応を議論すべきだとした。
野党は7日、衆院憲法審の幹事が与党提案について協議。「不要ではないが不急だ」などと反対意見が相次ぎ、当面は審査会に応じない方針を確認した。安倍晋三首相は、緊急事態宣言について報告した7日の衆院議院運営委員会で「新型コロナウイルス感染症への対応も踏まえつつ、国会の憲法審査会で活発な議論が展開されることを期待したい」と発言。これにも野党の反発が広がっている。
立憲の枝野幸男代表は記者会見で「感染症によって命の危機にさらされる人を一人でも少なくするのが、総理大臣としての唯一最大の役割だ」と指摘。共産党の小池晃書記局長は「究極の火事場泥棒だと思う。いま国民が国会に求めているのは抜本的な経済支援、医療崩壊を招かないための様々な手立てをとることだ」と批判した。(大久保貴裕、山下龍一)