「独断と迷走の安倍政権 与党内からも「末期の様相」 新型コロナウイルス」

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 以下、朝日新聞デジタル版(2020年4月18日 7時30分)から。

新型コロナウイルスの感染拡大を止めるため、安倍晋三首相は17日の記者会見で改めて全国の国民の協力を求めた。新型コロナ対応では、一度決めた方針や政策を首相自身が覆し、現場の混乱をまねいたケースも目立つ。いま政権内ではなにが起きているのか。
独断が「成功体験」
 「やるべきことは、今まですべてやってきたつもりだ。至らない点はあったとは思うが、これからも全力を尽くして努力していきたい」。首相は記者会見で、16日に指示した補正予算案の組み替えを始めとする新型コロナ対応について、自らの評価を問われてこう答えた。
 閣議決定した補正予算案の国会提出直前の組み替えに限らず、新型コロナ対応では、一度決まった政府方針が、首相の政治判断で覆る例が目立つ。
 はじめはイベント開催をめぐる方針だった。2月25日にまとめた政府の基本方針では、「現時点で全国一律の自粛要請を行うものではない」と明記。だが、その翌日、首相は全国的なスポーツ・文化イベントの2週間の自粛要請を突如、打ち出した。
 学校の臨時休校でも、自治体に判断を委ねると定めた基本方針を2日後に覆し、法的根拠なく、全国一斉の休校要請を出した。首相の側近の萩生田光一文部科学相とも事前に綿密な調整をした形跡はなく、専門家の意見も聴いていないなかでの「独断」だった。
 しかし、官邸内ではこの休校要請は「成功体験」と受け止められた。報道各社の世論調査では休校要請を評価する声が多く、首相自らも17日の記者会見で「全国の一斉休校は、私は判断として正しかったと思っている」と断言した。
 ある政府関係者は、今回の緊急事態宣言の全国拡大と一律10万円の現金給付への変更も、その体験が大きく影響していると解説する。
 「(緊急事態宣言の)対象地域の外に人が流れていくなら、全国に広げた方がいいよ」。政府高官によると、首相は先週後半、宣言の全国拡大を口にしていた。だが、加藤勝信厚生労働相ら多くの関係者が「(都道府県ごとに区域を判断する新型コロナ対応の)法律の立てつけが変わってしまう」などと反対した。
専門家や官僚、蚊帳の外?
 緊急事態宣言をめぐって意見が分かれるなか、降ってわいたのが、現金給付をめぐる自民党二階俊博幹事長と公明党の巻き返しだった。
 現金給付では、首相の頭にはもともと「全国民に一律10万円」があった。それが「減収し、生活に困る世帯に30万円」となったのは、麻生太郎財務相財務省の強い反対があったためだ。しかし、財務省の意見を採用した結果、30万円給付は世間から「もらえる人が少ない」「要件が分かりにくい」といった強い批判を呼んだ。
 「批判されているのは、役人の言った通りにした政策ばかりだ。どうせ批判されるなら思った通りにやった方がいい」。政権幹部は首相の心情をこう代弁する。その姿勢は、専門家や政策に精通する各省庁の官僚の知見が政策決定に反映されなくなっていく危険をはらむ。
 首相は16日午前、一律10万円給付と緊急事態宣言の全国拡大を政治決断した。
 そんな首相自身も宣言解除に向けた「出口戦略」が描けているわけではない。首相会見に同席した政府の諮問委員会の尾身茂会長は「感染が仮に下火になってもまったくゼロになるということはありえない」と指摘した。
 そもそも首相が言及した「大型連休中の人の移動」が実際に最小化され、効果が分析できるのは連休後で、官邸幹部の一人は「(解除の時期は)全く分からない」と厳しい見方を示す。大型連休後も住民への外出自粛の要請が続くのか問われた首相も、こう語るしかなかった。「断定的なことを申し上げることはできない」
混乱の背景に政権内のパワーバランス変化
 安倍政権の新型コロナ対応をめぐる混乱の背景には、発足当初から政権を支えてきた力学の変容があるとの見方がある。
 従来、政権の危機管理は菅義偉官房長官杉田和博官房副長官が政官の双方から担ってきた。菅氏は二階俊博幹事長や公明党との間にパイプがあり、杉田氏のもとには各省庁の情報が集まってくる。
 しかし、首相が2月に全国一斉の休校要請を決断した際には、首相の側近である首相補佐官が中心となり、担当する萩生田光一文部科学相だけでなく、菅、杉田両氏も蚊帳の外に置かれた。地域経済への打撃を懸念する両氏は、今回の緊急事態宣言の全国拡大にも慎重姿勢だったが、顧みられることはなかった。
 首相は全世帯への配布を表明した「マスク2枚」に加え、ミュージシャンの星野源さんの楽曲「うちで踊ろう」とともに自宅でくつろぐ動画をSNSに投稿。世間との感覚のズレに批判が相次いだ。マスクは官邸官僚の発案だとされるが、官邸幹部が止めに入ることはなかった。菅氏は記者会見で「ツイッターでは過去最高の35万を超える『いいね』をいただくなど多くの反響がある」と首相をかばうしかなかった。
 報道各社の世論調査では内閣支持率は軒並み下落傾向にある。新型コロナに翻弄(ほんろう)され、迷走する政権には、与党内からも「政権末期の様相だ」との声が漏れるようになった。
 「ポスト安倍」をめぐるレースへの影響は避けられない。世論調査ポスト安倍候補の筆頭にあげられる石破茂・元自民党幹事長に加え、新型コロナ対応をめぐって強気の発言を繰り返す東京都の小池百合子知事が存在感を増す。一方、首相が後継者と目しているとされる岸田文雄政調会長は、自らがまとめた世帯当たりの30万円給付案が、公明党だけでなく身内の自民党からもひっくり返される事態となり、「大きな傷を負った」(自民党ベテラン)とみられている。