「第2回花火の音は銃声だった…「犯罪もあるけど愛もあるんだ」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/9/21 17:00)から。

 かつてないほど分断が進むアメリカは、どこへ向かうのか。大統領選挙の激戦州ペンシルベニア州の街ヨークで、「二つのアメリカ」の境界線上にある場所を見つけた。この地に住みながら、アメリカ社会の今を伝えるルポの2回目。(敬称略)

 ヨークに住んで最初に親しくなったのが、同じタウンハウスに同居している20歳の青年、アンドリュー・ジャクソンだ。地元の大学に通っているが、自分で生活費や学費を稼がないといけないため、毎日スーパーマーケットで働いている。

 コロナ禍で商店が閉鎖された時期も、食料を求める人々のためにスーパーは例外扱いで営業を許可されてきた。そこで働くアンドリューのような人々は「エッセンシャルワーカー(不可欠な労働者)」と呼ばれている職種の一つだ。

 自らも黒人のアンドリューは、今年に入ってヨークで起きた黒人差別反対デモの様子などを写真におさめていた。自分が新聞記者で、ぜひ本人やこの町について話を聞きたいと伝えると、いろんなことを教えてくれるようになった。

 ある日、アンドリューと2人で地元のコミュニティー活動に参加して、帰りにテイクアウトのピザ店に立ち寄ったときのことだ。ストロンボリ(ピザ生地の中に具材を挟んだ食べ物)を注文して外で待っていると、アンドリューが夕暮れの町並みに目をやりながら、こう言った。

 「ここはとてもセグリゲートされた街なんだ。街の外の人たちは、ここを最悪の場所のように言うけど、僕はそうは思わない。ここには人と人のつながりがある」

 セグリゲートとは「分離する」という意味だ。アメリカにはかつて、黒人と白人の住む場所や学校などを分けるセグリゲーションが制度としてあった。現在ではこうした差別的な制度こそなくなったものの、人種や経済的な格差によって住む場所が分かれるセグリゲーションは、再び進んでいると言われる。

 ヨークにおけるセグリゲーションには、二つの側面がある。一つは人種・民族によって住む場所が分かれるというセグリゲーションだ。もう一つは、経済的な格差によって住む場所が分かれるセグリゲーションだ。

(後略)

(ペンシルベニア州ヨーク=大島隆)