以下、朝日新聞デジタル版(2020年10月5日 22時18分)から。
日本学術会議の会員任命をめぐる問題で、加藤勝信官房長官があいまいな説明を繰り返している。同会議に推薦された105人のうち6人が任命から外された理由は明確に語らず、推薦と任命のずれを「たまたま」と表現する場面も。野党側は加藤氏の国会での説明を求めている。
「総合的、俯瞰(ふかん)的観点に立って判断した。引き続きそうした説明をしっかり行っていきたい」
加藤氏は6人除外について、先週と同じ説明を繰り返した。5日の会見で判断の根拠として初めて「憲法15条」を持ち出した。公務員の選定罷免(ひめん)権は「国民固有の権利」とする15条をもとに、行政権を持つ内閣に任命の裁量があると判断した、との主張だ。
ただ、任命の根拠法となる日本学術会議法をどう解釈したのかについては、説明できていない。1983年の国会では、「政府が行うのは形式的任命」「学会の方から推薦をしていただいた者は拒否はしない」といった政府答弁があり、実質的に任命を左右した今回の対応との整合性を問われた。
加藤氏は解釈変更したかどうかは明言せず、「推薦の範囲の中で任命をしてきているが、これまでぴったり一致してきた。基本的考え方は一緒であって、たまたま対応の結果にずれがあるということ」と答えた。
複数の政府関係者によると、内閣府にある同会議事務局は安倍政権下の2018年9月、同会議が推薦すれば首相が必ず任命する義務があるのかと内閣法制局に照会。2カ月ほどの協議で義務ではないという「考え方を整理した」という。
加藤氏は約2年前に整理した協議結果の公表について、「中身をどういう形で示すかについて、今、(同会議)事務局で検討させている」とするのみだった。(西村圭史)
野党は追及姿勢を強める。立憲民主、共産、国民民主、社民の4党は5日、衆参の内閣委員会で7、8日に開かれる閉会中審査に加藤氏や担当する井上信治万博相の出席を求めた。ただ、与党側は要求に応じず、内閣府副大臣を出席させることを検討している。
野党は、学術会議の新会員として推薦された105人のうち6人を政府が除外した理由を中心に追及する構えだ。5日、任命されなかった6人のうち、3人に面会した。東京慈恵会医科大学の小沢隆一教授(憲法学)は「明かせない理由で任命しなかったと判断せざるをえない。学問上の評価とは全く別の理由。これは学術会議の存在そのものからしてあってはならない」と批判した。早稲田大学の岡田正則教授(行政法学)と面会した立憲の今井雅人氏は記者団に、「なぜ任命しなかったのか。首相が根拠を説明すべきだ」と語った。
(西村圭史)