「重症者、第2波超え 現場「国は何もしてくれないのか」」

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以下、朝日新聞デジタル版(2020/11/20 5:00)から。

 新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、19日に開かれた専門家の会合では、高齢の感染者や重症者が増えている厳しい状況が報告された。冬に向けてさらに深刻化する恐れがあるものの、政府は感染者を減らすための強い対策を打ち出せないでいる。

 「今後、重症化する人が増加する。救急医療の受け入れや手術を抑制しないといけない状況になると想定される」。19日の専門家組織の会合後、座長の脇田隆字国立感染症研究所長は会見で、今の感染状況に危機感を示した。感染拡大の要因には、基本的な感染予防対策がしっかり行われていない▽人の移動の増加▽気温の低下の三つを挙げた。

 メンバーの尾身茂氏も「何かしら対応が必要なのは間違いない」と話し、20日開催の政府の分科会で対策を提言する考えを明らかにした。

 9日、専門家組織のメンバーが多く参加する政府の分科会は、対策強化を求める緊急提言を出した。会長の尾身氏は「急激な感染拡大に至る可能性が十分ある」と強調した。だが、19日の会合の評価では、改善はまだ見られない。むしろ「2週間で2倍を超える伸び」など厳しい言葉が並ぶ。危機的な局面で人々の行動に影響力を持ってきた尾身氏らの訴えだが、人出の状況などからはその効力に陰りも見える。

 ソフトバンクの子会社「アグープ」のデータで、緊急提言が出た9日と1週間後の人出を比べると、東京駅で4・4%減、札幌駅で2・7%減、大阪駅で1・2%減にとどまった。名古屋市の栄駅はほぼ横ばい、福岡市の天神駅は逆に4%増えた。4月の緊急事態宣言では、大阪駅で53%減、東京駅で42%減などと大きく減っていた。

 メンバーの一人は会合後、「今の状況がかなり厳しいということが伝わっていない」と焦りを見せた。保健所の負荷が増し、医療現場の逼迫(ひっぱく)感は病床使用率という数字で見るよりはるかに強いと指摘する。

 東京大の広井悠准教授(都市防災)が指摘するのは、「警報慣れ」という現象だ。「何度も警報が出て自分が無事だと、『次も大丈夫だろう』と事態を過小評価しがちだ」

 広井さんは「夏の第2波は死者は大きく増えずに収まったが、現在の第3波は亡くなる恐れが高い高齢者も増えている。適切なリスク意識を持ってもらうことが重要だ」。症状がなくても感染していて、人にうつすリスクもある。「若い世代には、『高齢者のために行動を変えよう』と説明することも有効だろう」と話す。

 今後の見通しについて、順天堂大の堀賢教授(感染制御学)は「このままでは東京都内だけで1日1千人の新規感染者もあり得る」と警鐘を鳴らす。

 特に懸念されるのが、中高年層への感染の広がりや、高齢者施設などでの集団感染に伴う重症者の急増だ。自治体の発表を厚生労働省が集計したデータによると、11月18日は全国で重症者が280人に達し、「第2波」ピークの259人を超えた。緊急事態宣言が出ていた「第1波」ピークの328人には及ばないものの、感染から重症化までに2週間ほどの時間差があり、今の増加ペースが続けば12月にも上回る可能性がある。

医療現場からは悲鳴「何の対策もしてくれないのか」
 北海道ではすでに医療の状況が切迫している。入院調整に携わる医療関係者は「複数の受け入れ病院で院内感染が発生し、受け入れが止まった。現場は限界まで来ている」と話す。

(後略)