以下、朝日新聞デジタル版(2021/6/4 21:27)から。
コロナ禍の中での東京五輪・パラリンピックのリスクを指摘する専門家の動きに、政権与党が警戒を強めている。五輪で国民の祝祭ムードを高める政権の狙いに、水を差しかねないと見るからだ。感染防止対策で専門家の知見に頼りつつ、「五輪は例外」とするかのような政権の姿勢に批判も出ている。
4日午前の記者会見で、田村憲久厚生労働相は政府対策分科会の尾身茂会長らの動きに釘を刺した。五輪に伴うコロナの感染拡大リスクをめぐり、尾身氏らが「考え方」を示そうとしていることについて、「自主的な研究の成果の発表ということだと思う。そういう形で受け止めさせていただく」と述べたのだ。
田村氏の発言は、尾身氏らの考えについて、政府に助言する専門家組織の公式な意見としては受け入れない構えを示したものだ。政府と二人三脚でコロナ対応に取り組んできた尾身氏らの言動に、あらかじめ「枠」をはめたとも言える。
政権与党は、コロナ禍のもとでの五輪に対し万全なリスク管理を求める専門家に、神経をとがらせる。
尾身氏らは最近、専門家同士で連日のように意見を交わし、五輪開催によるリスクを議論している。東京の感染状況が、緊急事態宣言の目安となるステージ4(感染爆発)なら医療体制への負荷が大きく開催は難しく、ステージ3(感染急増)でも無観客や規模縮小などが必要との認識も共有した。
2日には国会で「いまの状況で(五輪を)やるというのは普通はない」と語り、開催する場合の規模最小化を求めた。翌3日は「感染のリスクや医療逼迫(ひっぱく)への影響について評価するのは、プロフェッショナルとしての責任」と述べた。
(後略)
(西村圭史、野平悠一、田伏潤)