以下、朝日新聞デジタル版(2021/8/26 5:00)から。
4度目となる緊急事態宣言下では、新型コロナウイルスの感染状況が改善する兆しが見えなかった。7月下旬、政府は宣言の対象を拡大、延長する検討に入った。政府に助言する専門家たちには「リーダーの言葉が国民に届いていない」と、菅義偉首相の発信に対する不満が広がっていた。
「国民の気持ちに寄り添うようなメッセージを出していただきたい」。7月30日夕、官邸の会議室。宣言の延長などを決める政府対策本部を前に、対策分科会の尾身茂会長らが首相に訴えた。夜の首相会見に向けた異例の「直訴」だった。
だが、会見後には専門家から「首相はやるべきことをやれなかった」と失意の声が漏れた。
緊急事態宣言がまた拡大・延長されます。新型コロナの感染拡大を抑え、国民の信を問うという菅義偉首相の戦略は崩れつつあります。A-stories「漂流 菅政権 コロナの時代」では、政権発足以来のコロナ対応を検証します。
首相は会見の冒頭、「高齢者の73%が接種を完了している」などと、ワクチン接種の実績を強調した。記者団からの「国民と危機感を共有できる自信はあるか」との質問には、「まず国民にそれぞれの立場で危機感を持ってもらうことが大事だ」「ぶら下がり(取材)も、かなりの頻度で行っている」などと応じた。
分科会メンバーの一人は「いつものように『成果』のアピールをやったら、危機感が通じない。我々が首相に求めたのは、自らの至らなさに真摯(しんし)に向き合い、『国民の皆さんに協力してほしい』という姿勢だった。なぜ聞き入れてくれなかったのだろう」と、肩を落とした。
「日本は圧倒的にうまくやっている」と自賛
(後略)
(石井潤一郎、中田絢子、岡村夏樹)