1ヶ月ほど前の記事だが、以下、デイリー新潮(2020/12/22(火) 6:15)配信より。
デジタル化は“本当に教育効果を高めるのか”
(写真)"スティーブ・ジョブズは“iPadは(子供の)そばに置くことすらしない”という"河野太郎内閣府特命担当大臣の「ハンコ廃止」を巡る反応を見てもわかるように、基本的に世論は「デジタル化」に好意的である。ハンコにこだわる業界、人は「古い」と見なされる。実際に、日本では利便性を妨げている旧弊、悪弊が数多くある。これらをなくしていくことは、多くの人の利益にもつながるだろう。
しかし、あらゆる分野でデジタル化を無邪気に進めていいのかというと、話は別。
デジタル教科書の使用をやめた学校も
(写真)"子供に与える悪影響は――"国民の関心がコロナに集中している中、政府が着々と進めつつあるのが、小・中学校の教科書のデジタル化だ。
10月の段階で、平井卓也デジタル改革担当大臣は、記者会見で、河野大臣・萩生田光一文部科学大臣とは「デジタルファーストは時代の要請」という認識で一致したこと、そして子供たちにタブレットなどを配布していくことを推進するべきだという持論を述べている。
平井大臣は、紙の教科書を廃止し、タブレットに変換していくことが望ましいと考えているようである。
教科書のデジタル化については費用やメンテナンス等に加えて、それ以上に問題なのはそれが本当に教育効果を高めるのか、また子供に与える悪影響はないのか、という点については考慮されていない点である。
(写真)"ビル・ゲイツも、子供が14歳になるまでスマホを与えなかったという"
「推進派」の意見をまとめると次のようなことになる。
「子供のうちからデジタル端末に慣れておくことはプラスになる。また、動画や豊富な画像が使えるので、理解が進みやすい。情報のアップデートも可能だ。重い教科書をランドセルに詰めて運ぶ必要もなくなる」
こうした声を後押しするかのように、時折新聞やテレビでは、先進的な取り組みとして、すでにタブレットを導入している学校などを紹介している。子供たちには好評だ、といった声も添えて……。
しかし、すでにデジタル化を進めている諸外国では問題も明らかになっているのも事実だ。そのため、新聞もこの問題を扱う際には、ハンコの時とは異なり、慎重な論調が目立つ。特に熱心なのは読売新聞で、12月1日~5日、5回にわたり「デジタル教科書を問う」という連載記事を掲載。そこではオーストラリアや韓国などの先行例を紹介したうえで、効果への懐疑的な見方を示している。
紹介されているオーストラリア、シドニーの小学校の事例は示唆に富んでいる。5年間続けていたデジタル教科書の使用を取りやめた、というのだ。
理由は、デジタル教科書の場合、画面の切り替えやメール着信などで気を取られることが多いため、紙を使ったほうが集中力が高まる、というものだった。
こうした報告は世界各国からすでにあがっている。
(後略)