以下、朝日新聞デジタル版(2021/3/22 10:30)から。
12年ぶりに新しい知事が選ばれる知事選が21日、投開票され、前千葉市長の熊谷俊人氏(43)が、前県議の関政幸氏(41)=自民推薦=や元予備校講師の金光理恵氏(57)=共産推薦=ら7人を大差で破り、初当選した。自民系ではない知事は堂本暁子氏以来となる。投票率は38・99%(前回31・18%)。猛威を振るう新型コロナウイルス対策などの課題に迫られる中、難しい船出となる。
関氏の大敗を受け、自民党県連の河上茂幹事長は21日夜、報道陣に「退く考えだ。知らないふりはできない」と話し、幹事長職を辞任する意向を示した。
森田健作知事が3期12年で引退。過去最多の新顔8人が立候補し、熊谷、関、両氏の事実上の一騎打ちの構図となった。
熊谷氏は一昨年の台風災害で、SNSで展開した森田県政批判で注目され、自民批判票も取り込んだ。告示前日まで千葉市長を務め、コロナ対策に力を注ぐ姿勢もアピール。立憲民主党や日本維新の会の県組織など、支援の幅を広げた。
関氏は党推薦候補として熊谷氏との「与野党対決」の構図に持ち込もうとしたが、自民党で不祥事が相次ぎ、公明党が自主投票を決め、逆風に苦しんだ。
選挙戦ではコロナ禍で感染防止のために大規模集会が開けないなど各陣営の運動が制限される異例の戦いだった。(今泉奏)
◇
熊谷氏は午後8時すぎ、当選確実の知らせを受け、千葉市中央区のホテルに姿を見せると、支援者たちに拍手で迎えられた。
熊谷氏は「多くの県民の支持で当選させてもらった。感謝する。コロナ禍には市町村や議会と連携し、オール千葉県で乗り越えたい。これから各地域の皆さんの思いをしっかりと県政にくみ取っていく。現場主義、対話に基づいた開かれた県政を着実に進める」と抱負を語った。
熊谷氏は「県民党」を掲げた。県医師会の政治団体の推薦を受けるなど、広く浸透し、自民党や公明党の一部の国会議員からも支援を受けた。
選挙中は、市長選に立候補した元副市長の神谷俊一氏と一緒に演説することも。県と千葉市の連携強化も掲げ、相乗効果を図った。街頭演説では、市長を務めた行政経験を強調。新型コロナ対策でのリーダーシップの発揮や、医療福祉の充実などを訴えた。地盤とする千葉市をはじめ、県内全域に支持を広げた。(上田雅文)
◇
関氏の事務所は、熊谷氏当選の知らせが入ると、落胆の声が広がった。目を赤くした関氏は「コロナ禍だったが、私自身の力不足だった」と述べ、支援者らに深々と頭を下げた。
自民党の推薦を受け、大規模な組織戦を狙った。だが、緊急事態宣言の影響で集会が困難に。宣言下での政権の不祥事も重なった。
先に立候補を表明した熊谷氏には、知名度で劣っていた。党内には「知名度が上がれば、票はついてくる」という声もあった。選挙戦で「少しずつ知名度が浸透しているように感じた」(関氏)が、自民党に吹く強烈な逆風で状況は好転しなかった。
関氏は「集会を主とする立場からすると厳しかった」と、コロナ禍選挙の難しさを漏らした。それでも「タイミングや流れを言い訳にはできない。私に(逆風を)吹き飛ばす力があればよかった」と語った。(今泉奏)
◇
落選した金光氏は午後8ごろ事務所に姿を現し、「結果は残念だったが、票のために掲げた公約ではない。今後も路上でジェンダー平等社会の実現や平和について声を上げていきたい」と語った。陣営幹部は敗戦について「出馬表明から選挙まで時間が足りなかった」と弁明した。(高室杏子)