「自宅付近の「盛り土」どう確認? 豪雨災害から身を守る」

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以下、朝日新聞デジタル版(2021/7/5 19:56)から。

 大雨の影響で3日に静岡県熱海市伊豆山(いずさん)で発生した土石流。県は4日、この土石流の最上流付近に、「開発行為」による盛り土があったとしたうえで、これを含む土砂の崩落が「被害を甚大化したものと推定される」との見解を公表しました。自らの居住地に潜む危険性の確認や、適切な避難の方法についてまとめました。

 自分の住んでいる地域がどういう被害を受ける可能性があるのか。国土交通省が提供しているウェブサイト「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/index.html別ウインドウで開きます)では、住所を入力すれば洪水で想定される浸水の深さなど、発生が予測される災害ごとに危険度を調べることが可能だ。谷や沢を埋めたり、傾斜地盤上に盛り土したりした大規模盛り土造成地の位置を確認することもできる。また、市町村もホームページなどでハザードマップを提供している。

 ただし、今回の土石流で県が明らかにした盛り土はポータルサイトのマップに記されていない。国交省都市安全課の担当者は「盛り土の上や、盛り土をした山の斜面のすぐ下側に人家がなかったためにマップの掲載から外したことが考えられる」としたうえで、「これほど大規模に民家があるところまで土砂が下っていくことは想定外だった」と話す。

 実際に災害が差し迫った際の新たな避難情報の運用も5月から始まっている。大きな変更点は、これまで「避難指示」と「避難勧告」に分かれていた情報が「避難指示」に一本化された点だ。

 静岡県庁防災局(当時)や同県下田市での勤務経験がある防災・BCP(事業継続計画)アドバイザーで自治体向け防災・BCP講座「BB.univ」学長の森健さんは「避難勧告なしで避難指示が発出されることになるため、住民も自治体職員も一挙に緊張度を高める必要性がある」と指摘する。

 内閣府がまとめた「避難情報に関するガイドライン」によれば、5段階ある警戒レベルのうち「レベル4」に、避難の「指示」と「勧告」が含まれていたのを今回見直した。市町村から「避難指示」が出たら、危険な場所から自治体が指定する避難場所や高層階など安全な場所へ避難する必要がある。

 より危険度が高い「レベル5」は「緊急安全確保」で、この段階で行動に移しても、安全を確保できるとは限らない切迫した状況だ。レベル4までに避難を終えておく必要がある。

 「レベル3」は「高齢者等避難」。高齢者や障害があるなどの理由で避難に時間のかかる人は危険な場所から避難する必要がある。ただ、避難勧告が廃止されたことで改めて、「高齢者以外の人にとってはレベル3の段階が『避難準備』だと認識する必要がある」と森さん。

 避難の基本は、指定避難場所や安全な親戚、知人宅など自主的な避難先へ移動する「立ち退き避難」。洪水や高潮などの被害想定を自治体のハザードマップなどで確認し、自宅や施設の上階にとどまった方が身の安全を確保できる場合もある。内閣府も「小中学校や公民館に行くことだけが避難ではない」として、ハザードマップで氾濫(はんらん)想定区域に入っていない▽浸水の深さより居室が高い▽水・食料などの備えが十分、といった条件を確認して自宅にいても大丈夫かなどを事前にチェックしておくよう呼びかける。

 しかし、2019年に発生した台風15号、19号を受けて政府が作成したリポートによると、警戒レベル5が意味する「命を守る最善の行動」について、4割弱の人が「市町村が指定した避難場所等に速やかに避難した方がいい」と回答した。

 森さんは「『避難』の意味は、『安全を確保すること』だ。『避難所へ行くこと』と理解している人が多いのではないか。避難場所へ行くことが必ずしも避難を意味するわけではない。住民一人ひとりに『より考え、判断すること』が求められている」と話す。(有近隆史)