松本道弘「速読の英語」(1980)は、1980年に1回読了し、1981年にスキミングと2回目の読了をし。1982年には3回。今年にはいってからも2回読んだが、十分に咀嚼できているかは、また別問題だ。ただし、本書の問題提起は、刺激的で、役立つことは間違いない。
著者は、「達者な英会話を必要とする人は、ごくひとにぎりの日本人でしかない」という情勢認識をもっており、「行動と思考を広げる手段として」、また「自分の未知な分野を切り拓く、有効でかつ効果的な電動工具」として、また「情報を入手する英語」として、日本では「読む英語」のほうがはるかに重要という。また、「読む英語と話す英語、いわゆる英会話とが別物であるように思っている人も多い。しかし、それは違う」と著者は断言する。「タイムやニューズウィーク、ビジネスウィークやリーダーズ・ダイジェストを読んでいれば、会話の上達も加速的に早くなる」というのだ。著者のいう「読む英語」とは、「英会話、そしてヒアリング、英作文にまで通じる力を持った「読む英語」」のことである。そして、「日本に居ながらにしてできる方法、それが速読だ」と喝破する。
芥川龍之介が英書を日1冊の速さで読んだということを人から聞かされた時、私は大変なショックを受けたものだ。日本語で1冊読むのも大変である。
故松本亨博士も、「内容のやさしい英書なら、頑張れば、1日1冊ぐらいは読破できる」と、生徒達に喝破されたと聞いている。(p.29)
そして速読にかんするディベート…。
気になった表現をメモ書き的に少しだけ引用しておく。
Shrinking is a means of stretching.
active reading
The faster most people read, the better they understand.
そして、読書スピード。
1分間で何語読めるかという読書スピードをはかるときに、words per minute (WPM)という用語を用いると、はじめて知ったのも本書である。それで、著者は、200WPMが、ひとまずの目標という。京大の安藤教授も、「日本人にとって英語は外国語であるから、200wpm を越えれば満足してよいと思う」と述べ、松本氏も、「200wpm とは、初段への登竜門であるから、私の狙いとするところと本質的に同じである」と述べている。
著者は、「なぜ速読なのか」次のようにいう。
1.英語の語感が身につく.
2.英語のこころ(発想)が身につく.
3.英語の、そして欧米社会の論理や発想が身につく.
4. 日本に居ながら欧米社会を疑似体験することができる.
5. 英語を通じて得られる frame of reference が拡大され、スピーキングやライティングが楽になる.
6.同じ理由により、ヒアリングが伸びる.
7.ますます英語の理解度が増すので、読書スピードも速くなる.
「その最大のメリットは、独りでできるという点である」。
著者は、現在の英語学習者が、「読むという地味な学習法を敬遠しがち」で、英会話の内容に「おしなべて内容がない」。海外留学者にとって、「最大の悩みはなんと読書」。多くの国際ビジネスマンは「ビジネス・トークよりも速読の必要性を感じはじめている」。speaking, writing,, reading, hearing の四つは「すべてが有機的につながっているという認識が欠如している」。国際ビジネスマンでも、「原書がスラスラ読める人はきわめて稀である」。「2、3年海外生活を積んでも、そのほとんどはパーティなどで得た耳学問で、底の浅いものが多い。「海外暮らしの、海外知らず」である」。「日本での教育者、知識人、マスコミ関係者の中にも、専門書以外の原書や雑誌がスラスラ読める人はほとんどいない」。
英語術のアプローチと英語道のアプローチの違い、術君と道君のストーリーも面白い。
著者によれば、英語のできる人とは、「準拠体系」、いわゆる FOR (a frame of reference) の大きい人をさすという。
"Just read for the idea."という読み方をして、「敵の文化的背景やFOR」を知ること。
忘れよ。覚えるな!と口を酸っぱくして強調するのはそういう意味である。ただ、多くを忘れるためには多くをインプットせねばならない、ということを忘れてはならない。
そのためにはーやはり速読だ。(p.74)
「私の読書体験」も参考になる。