いよいよ野生のアルバトロスツアーが始まる

 ロイヤルアルバトロスセンターはオタゴ半島の先端にある。人間が住む町から最も近い野生アルバトロスの生息地といっても、湾が狭く細長いから、町からこのセンターまでは結構遠く感じる。町の中心からこのセンターまで、実際のところ、1時間ほどのドライブだったろうか。センター内にはカフェもある。
 私たちが参加する4時からのツアーが始まった。実際の野生アルバトロスの見学の前に、係員がスライド上映をしながら、アルバトロスの生態について説明してくれる。女性係員は少し緊張気味なようだ。人間以外の動物の方が得意という、動物好きな人によくあるタイプの人かもしれないと、私は勝手に想像した。それでも徐々に緊張感がほぐれているようで、説明は上り調子である。スライド上映も終わって、いよいよ観察所に移動する。私たち全員は10数人のグループで、観察小屋のような場所まで、金網に守られた舗装通路を歩いて登っていく。足の悪い年配の女性が私たちの一団の中にいて、この人のために電動の車椅子が用意され、始め運転にとまどっていたようだが、舗装された細い道路をゆっくりと上がっていく。こうした配慮が行き届いているのは、いいことだ。
 アルバトロスは、そもそも陸地から離れた島々に生息することが多いため、都市部近くに生活することは大変めずらしいという。島ではなく大陸にあるという意味で、オタゴ(Otago)のアルバトロス生息地は、世界で唯一と言われている。このタイアロア岬に住むアルバトロスを、猫や犬、イタチ、テンなどの肉食動物から保護することは大変だという。またわれわれ訪問者から受ける影響も見逃せない。したがって、人間の訪問者数は厳しく制限されているのである。われわれの入場料金も環境保護のために使われているという。
 小屋に入ると、ガラス越しにアルバトロスを見ることができるが、どうやらヒナがいるようだ。ガイドの説明を聞いている間に、幸運なことに、上空からアルバトロスが飛行してきた。参加者に感動が伝わる瞬間だ。そのアルバトロスはしばらく止まって、ヒナに一歩一歩近づいていく。その度に、参加者の気持ちが揺れ動く。双眼鏡がまわされ、狭い小屋の中にちょっとした興奮が沸き起こる。人を押しのけても前のめりになって見たい気持ちにかられるが、自分だけのことを考えてはいけない。先ほどの足の不自由な女性がもっといい場所で見ることができるように私が場所をゆずると、大変感謝された。
 受付に戻って、野生のアルバトロスを真近に見ることができて良かったという気持ちを参加者全員で分かち合った。私もガイドに感謝をして、駐車場に向かった。