ニュージーランド人にとってモノづくりは日常茶飯事

 大体、私が毎日入っているスパだって、スパの小屋はアレックスが作ったという。
 スパの蓋は正八角形なのだが、これもアレックスの手作りだというのは、木製の板にアルミか何かを張り付け、銀のガムテープで作ってあることからもわかる。壁には、オーストラリアの安物のブーメランがいくつかディスプレイとしてかけてある。スパの小屋には、夏につかうのであろう、日本なら海岸で使うような日傘が何本か置いてある。けっしてお洒落ではない。しかし、例のごとく、「必要にして充分」なのである。スパの小屋の中には二台目の冷蔵庫が置いてあるのだが、この前、次女のジョニとトムの家の近くを散歩していたら、中古ショップがあり、冷やかしにのぞいてみると、冷蔵庫やオーブン、ソファ一式と中古家具が山のように置いてある。おそらくスパにあるような二台目の冷蔵庫はこうした店で買ってきたのだろう。車につけるリアカーもレンタルできるようだから、運搬も自分でやるに違いない。日本は全部、業者まかせだから、考え方が基本的に違うのだ。
 大体、今アレックスは、タウンズビルにいる長男ポールと一緒に、家の関係で何かつくっているらしい。
 長男の家で一緒に何かを作っているというのも微笑ましい話だ。中古車を探しているときにも、お世話になったトムは、自宅近所を車でまわりながら、「あの家の屋根は俺が塗ったんだ」と私に言っていた。友人の女性の家の屋根らしいが、「仕事をしながら、いつ頃塗ったの」と私が聞くと、「仕事を終えて、5時から9時ごろまで、何日かかけて塗ったんだ」と答えていた。「彼女は独身なの」と私が聞くと、「その通り」とトムは答えた。つまり男手が足りない環境かなと私は考えたのだ。ニュージーランドは、それほどDo it yourselfの社会なのである。
 日本なら仕事を奪うことにもなりかねない、このDo it yourself. やはり日本とは違った社会と言わなくてはならない。どっちが私の好みと聞かれたら、私の好みはニュージーランドなのだが、そのためには、まず自由な時間がないといけない。日本じゃ、「奴隷」のように働いて時間貧乏ではあるけれど、お金は稼げるから、稼いだ金を使って業者まかせにしているというわけだ。