日本の食事の仕方をもっとアピールした方がいい (1)

しゃぶしゃぶパーティが終わって

 連続二夜にわたる私が主催するパーティである。
 今回はお隣りの牧師でもあるニック、ラングエッジインスティチュートで働くハンナ、そして長女キャサリンと11歳のサブリナが客人だ。スーパーのニューワールドで働いている長男のジョンは、残念ながら今回は私用で来れないという。
 テーブルに座ってもらう前に、私から、いくつかお願いをさせてもらった。
 ひとつは、日本の食事の仕方はニュージーランドとは全く違うということだ。
 ニュージーランドでは、メインディッシュをつくって、野菜などをバンバンバンとこしらえて、みんなでシェアをする。食べる順番もスープのあとで、メインディッシュ、デザートと順番が決まっている。これに反して、日本食は、始めも終わりも、西洋式からするとずっと自由な様式で、順番もとくに決まっていない。好きに食べてよいことをまず伝えた。
 第二に、ニュージーランドでは、繰り返しになるが、メインディッシュと野菜をバンバンバンと作る方式で、その皿をまわしながら、自分の皿に自分でもりつける、いわばワンプレート方式だ。だから、何をどれくらい食べたのか、一目でわかるしかけになっている。食べたい量、食べられる量だけ、自分でよそるわけだから、分量を理解することに何ら問題がない。
 ところが日本食の場合、食べた量を理解することは簡単ではない。
 そこで、本日のコースを説明することになる。
 本日は、刺身、寿司、牛肉のしゃぶしゃぶ。そして最後は、それをスープにして細うどんを食べるので、むずかしいと思うけれど、それぞれ食べる量を自分で判断して下さいと私は伝えた。ニュージーランドと違って、日本料理は、一品一品は軽いかもしれないけれど、全体としては、結構食べることになると思うので、適宜考えて欲しいと。
 そして、もしまだお腹がすいていたら遠慮なく教えて欲しい。料理を用意するのは私の責任だが、よくこの家のご主人のアレックスが言っているように、「もしお腹がすいたまま、この部屋を出るようなことがあったら、それはあなたたちの責任である」ということも忘れずに私は伝えた。
 第三に、本日は、箸を使ってもらいたいこと。
 そのために、わざわざ私は、割り箸をアジアンマーケットで買ってきていた。一昨日トムとジョニを招待した際には、フォークで豚しゃぶをやったのだけれど、やはり箸でないといけないと深く反省した、これはその結果だ。
 第四に、今日は、ときどき私は日本語で話しかけることがあると思いますが、そんなときは、わかったふりをして驚かないで下さいと話した。日本食を食べていると、日本語のノリで、日本語が口に上ることが多いからだ。
 以上の四点を、食事をする前に彼らに伝えた。こうしたことを説明しておかないと、彼らはとまどうと思っての、これは私の配慮だ。
 あとで話して大笑いをしたのだが、この家のジュディの食事作法のひとつに、スープが出たときには、スープを早く片づけないといけないというのがある。スープが出たと思ったら、そのスープ皿が片づけられるのがすごく早いからだ。そして、いったん片づけられたら、当たり前のことだが、多少残っていようとも、二度と自分のテーブルの前には登場してこない。順番が厳粛に決められているのだ。
 このことを話したら、サブリナがまさにその通りという顔をして、「いったん片づけられたら、それでおしまいなのよね」と笑って言った。